Indiebase編集部です。
薄暗い部屋に、4人の少女がいます。
一人は人形を抱えて床に座り、もう一人は壁際に立っています。残る二人は、まるで闇に溶け込むように部屋の奥に佇んでいます。
アメリカの画家ジョン・シンガー・サージェントが描いた『エドワード・D・ボイトの娘たち』(1882年、ボストン美術館所蔵)。
裕福な家庭の姉妹を描いた肖像画ですが、どこか奇妙です。
なぜ4人は離ればなれに配置され、二人の顔は暗闇に隠されているのでしょうか。
4人姉妹なのに、誰も目を合わせない
描かれているのは、アメリカ人画家エドワード・ダーレー・ボイトの4人の娘たちです。
当時、一家はパリで暮らしていました。
左に立つのは8歳のメアリー・ルイーザ。手前で人形を抱えるのは4歳のジュリア。
奥には14歳のフローレンスと12歳のジェーンがいます。
しかし、姉妹たちは互いに目を合わせず、それぞれ別の方向を向いています。
特に奥の二人は、表情さえはっきり見えません。
家族の肖像画なのに、そこには親密さよりも孤独を感じさせる空気が漂っています。
少女たちは、なぜ暗闇にいるのか

この絵の特徴は、光と闇の使い方です。
最も幼いジュリアは明るい場所に座り、年上の少女たちは次第に暗い空間へと配置されています。
そのため、成長するにつれて子ども時代の無邪気さが失われていく様子を表している、と解釈されることがあります。
ただし、サージェント自身がそうした意図を明言したわけではありません。
画面には広い空間が残され、少女たちの間には不思議な距離があります。
発表当時も、その異例の構図は批評家たちを戸惑わせました。
この絵は、少女たちの姿だけでなく、彼女たちを取り囲む沈黙まで描いているようです。
名画『ラス・メニーナス』との意外な関係
実は、この作品には有名なモデルがあります。
17世紀のスペインの画家ベラスケスが描いた『ラス・メニーナス』です。

サージェントは1879年にスペインを訪れ、この名画を模写していました。
広い室内に人物を配置し、奥行きと光によって独特の空間を生み出す構図には、その影響が見られます。
また、画面の両側にある巨大な日本の陶磁器の壺も印象的です。
この壺は実際にボイト家が所有していたもので、現在は絵とともにボストン美術館に収蔵されています。
4人の少女は確かに同じ部屋にいる。それなのに、まるで別々の世界にいるように見える。
その不思議な距離感こそ、この肖像画が今も人々を惹きつける理由なのかもしれません。
(文:Indiebase編集部)
