Indiebase編集部です。
ニューヨークの建物の屋上で、3人の女性が髪を乾かしています。
金髪の女性は両手を頭に添え、中央の女性は腰掛けながら髪を持ち上げ、右の女性は長い髪を風になびかせています。
背後には洗濯物が干され、その向こうには大都会の建物が広がっています。
アメリカの画家ジョン・スローンが描いた『日曜日、髪を乾かす女性たち』(1912年、アディソン美術館所蔵)。
100年以上前のニューヨークで、女性たちが楽しんでいたささやかな休日の光景です。
なぜ女性たちは屋上で髪を乾かしているのか
20世紀初頭のニューヨークには、ヨーロッパなどから多くの移民が集まっていました。
労働者階級の人々が暮らす集合住宅は狭く、現在のような冷房設備もありません。
そんな人々にとって、屋上は貴重な開放空間でした。
洗濯物を干したり、涼しい風に当たったり、近所の人々と会話を楽しんだり。
この絵に登場する女性たちも、日曜日のひとときを屋上で過ごしています。
忙しい都会の暮らしの中で、屋上だけは少し自由になれる場所だったのです。
画家が窓から見つめていた「人間喜劇」
ジョン・スローンは、ニューヨークの庶民の日常を描いた画家です。
彼はグリニッジ・ヴィレッジの高層階にアトリエを構え、周囲の屋上で繰り広げられる人々の暮らしを観察していました。
この作品も、アトリエの窓から見えた光景に着想を得ています。
スローンは、コーネリア通りの屋上で見かける人々の姿を、一種の「人間喜劇」と表現しました。
そこに登場するのは、王族でも英雄でもありません。
洗濯をする人、休憩する人、髪を乾かす人。
誰もが見過ごしてしまう日常こそ、彼にとって魅力的な絵画の題材でした。

美しい女性ではなく、普通の女性を描いた
スローンは、都市の庶民生活をありのままに描いた「アッシュカン派」の代表的な画家です。
当時の美術では、理想化された美しい人物や華やかな風景が好まれることもありました。
しかし、スローンが描いたのは、飾らない女性たちの姿です。
3人は画家の存在を意識することなく、それぞれ自然な姿勢で髪を乾かしています。
そこには、誰かに見せるためではない、くつろいだ時間が流れています。
100年以上前の女性たちも、休日にはこうして髪を乾かし、おしゃべりを楽しんでいた。
遠い時代のニューヨークが、急に身近に感じられる一枚です。
(文:Indiebase編集部)
