Indiebase編集部です。
画面いっぱいに咲き誇る、無数の白い花。
遠くには赤い屋根の家が並び、緑の丘の向こうには淡い月が浮かんでいます。
ノルウェーの画家ハラルド・ソールベルグが描いた『北の花畑』(1905年、ノルウェー国立美術館所蔵)。
美しい田園風景ですが、どこか現実離れした静けさが漂っています。
実はこの絵、昼間ではなく、北欧の夏の夜を描いた作品なのです。
夜なのに明るい、北欧の夏
ノルウェーでは夏になると、夜になっても空が完全には暗くならない地域があります。
北極圏では太陽が沈まない「白夜」が起こり、それより南でも夜遅くまで薄明るい時間が続きます。
『北の花畑』に描かれたのも、そんな北欧の夏の夜です。
空には白い月が浮かんでいますが、大地は柔らかな光に包まれています。
昼でも夜でもない、不思議な時間。
ソールベルグは、北欧ならではの光が生み出す幻想的な風景を描きました。
無数の白い花が生み出す不思議な世界

画面の半分近くを埋め尽くすのは、白いマーガレットのような花々です。
一輪一輪が細かく描かれ、遠くへ行くほど白い花が溶け合っていきます。
その向こうには、暗い緑の森と、静かに流れる川。
花畑の明るさと森の暗さが、鮮やかな対比を生み出しています。
不思議なのは、これほど花が咲いているのに、人間の姿が一人も見えないことです。
まるで、人間が眠りについた後にだけ現れる秘密の花畑のようです。
ムンクと同時代に生きた、もう一人の画家
ソールベルグは1869年生まれ。『叫び』で知られるエドヴァルド・ムンクと同じ時代を生きた画家です。
1902年から1905年にかけて、ノルウェーの鉱山町レーロース周辺で暮らし、数多くの風景画を制作しました。

彼が追い求めたのは、目に見える景色だけではありません。
自然の中に漂う静けさや、言葉では説明できない感情でした。
『北の花畑』にも、現実の風景を超えた神秘的な美しさが宿っています。
月が昇っても、花畑はまだ明るい。
北欧の短い夏、その一瞬の光を閉じ込めたような作品です。
(文:Indiebase編集部)
