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イギリスの画家リチャード・ダッドが描いた『妖精の木こりたちの会心の一撃』(1855〜1864年、イギリス・ロンドンのテート所蔵)。草木が生い茂る森の中に、王族のような人物や小さな妖精、奇妙な生き物たちがひしめき合っています。
まるで童話の挿絵のようですが、この絵を描いたのは、実の父親を殺害し、精神病院に収容されていた画家でした。
さらに約100年後、この作品に魅了されたのが、ロックバンド「クイーン」のフレディ・マーキュリーです。
父親を悪魔だと思い込み、殺害した画家
ダッドは1817年、イギリスに生まれました。若くして画家としての才能を認められましたが、1842年の中東旅行中に精神状態が悪化。自分がエジプトの神オシリスに支配されていると信じるようになります。
1843年、父親を悪魔の化身だと思い込み、殺害。フランスへ逃亡したものの逮捕され、ロンドンのベスレム精神病院に収容されました。
その後、人生の大半を精神病院で過ごしますが、絵を描くことはやめませんでした。
妖精たちは、たった一撃を待っている

絵の中央で斧を振り上げているのが、題名にもなっている妖精の木こりです。
狙っているのは大木ではなく、一粒の木の実。妖精の女王マブの馬車を作るため、これを割ろうとしているのです。
周囲には、その瞬間を見届けようとする妖精たちが集まっています。
ダッドは病院職員ジョージ・ヘンリー・ヘイドンのために、この絵を約9年間描き続けました。
縦約54センチの小さな画面に、無数の人物や草花を執拗なほど細かく描き込んでいます。
しかし1864年、別の病院へ移されたため、作品は未完成のまま残されました。
フレディ・マーキュリーが夢中になった幻想世界
この絵に魅了されたのが、クイーンのフレディ・マーキュリーです。
フレディはロンドンのテート・ギャラリーで作品を鑑賞し、バンドのメンバーやプロデューサーにも見せたと伝えられています。
そして1974年、クイーンのセカンドアルバム『Queen II』に、絵と同じ題名の楽曲「The Fairy Feller’s Master-Stroke」を収録しました。
歌詞には絵に登場する妖精や人物が次々と現れ、複雑に重なる楽器と歌声によって、幻想的な世界が音楽へと姿を変えています。
父親を殺害した画家が、精神病院で9年もの歳月を費やして描いた幻想世界。それが100年以上の時を経て、世界的ロックバンドの楽曲になったのです。
そして絵の中では今も、妖精の木こりが斧を振り下ろす瞬間を待ち続けています。
(文:Indiebase編集部)
