Indiebase編集部です。
白い衣装をまとった巨大な女性が、空を飛ぶように西へ進んでいます。
その背後には鉄道や馬車、農地が広がり、前方では先住民や野生動物たちが暗い土地へと追いやられています。
アメリカの画家ジョン・ガストが描いた『アメリカの進歩』(1872年、オートリー西部博物館所蔵)。
この絵は、19世紀アメリカで広まった「マニフェスト・デスティニー(明白な天命)」という思想を象徴する作品です。
アメリカが西へ領土を広げることは、神から与えられた使命である。
そんな考え方が、一枚の絵に表現されています。
白い女性は何を表しているのか
中央に浮かぶ女性は、アメリカを擬人化した「コロンビア」です。
額には星が輝き、片手には電信線、もう片方には学校の教科書を持っています。
彼女の背後には鉄道や蒸気船が進み、農民たちが土地を開拓しています。
これらは、アメリカが掲げた文明や技術、教育の普及を象徴しています。
一方、コロンビアが向かう西側には暗い雲が広がっています。
文明の光が西へ進み、未開の土地を照らすという、当時の開拓者側の世界観が表現されています。
先住民たちはなぜ逃げているのか

この絵で見逃せないのが、西側に描かれた先住民たちです。
彼らは馬に乗り、バイソンなどの動物とともに西へ逃げています。
当時、アメリカ政府は領土拡大を進め、先住民の土地を次々と奪っていました。
強制移住や戦争によって、多くの先住民が故郷を追われています。
しかし、この絵では、そうした暴力的な歴史が「文明の進歩」として表現されています。
開拓する側にとっての進歩が、先住民にとっては土地と生活を失うことを意味していたのです。
西部開拓を正当化した一枚
「マニフェスト・デスティニー」という言葉は、1845年にジャーナリストのジョン・L・オサリヴァンが使用したことで広まりました。
アメリカが北米大陸へ拡大することを、当然の使命として正当化する考え方です。
ガストがこの絵を制作した1872年には、大陸横断鉄道がすでに開通し、西部への移住が加速していました。
『アメリカの進歩』は、当時のアメリカ人の一部が西部開拓をどのように捉えていたかを示しています。
白い女性が運ぶ「文明」の背後には、土地を奪われ、追われていく人々の姿が描かれています。
(文:Indiebase編集部)
