Indiebase編集部です。
十字架に磔にされたイエス・キリスト。
しかし、その体は不自然なほど鮮やかな黄色に塗られています。
周囲には秋の田園風景が広がり、民族衣装をまとった女性たちが静かに祈っています。

フランスの画家ポール・ゴーギャンが描いた『黄色いキリスト』(1889年、アメリカ・バッファローAKG美術館所蔵)。
なぜゴーギャンは、キリストを黄色く描いたのでしょうか。
モデルになったキリスト像は実在する
この絵には、実在するモデルがあります。
フランス北西部、ブルターニュ地方のポン=タヴァン近郊にあるトレマロ礼拝堂。
そこには17世紀に作られた、彩色された木彫りのキリスト像が残されています。
ゴーギャンはこの像を見て、スケッチを制作しました。
しかし、絵の中では礼拝堂の内部ではなく、広々とした田園風景の中に十字架を置いています。
さらに、キリストの体を鮮やかな黄色に変えました。
現実の風景をそのまま再現するのではなく、自分の感じた世界を描こうとしたのです。
黄色は、ブルターニュの農民たちの信仰を表していた
1880年代、ゴーギャンはパリを離れ、ブルターニュ地方で制作を続けていました。
彼が強く惹かれたのは、土地に根づいた伝統文化と、人々の素朴な信仰でした。
画面の左下には、白い頭巾をかぶった3人の女性が描かれています。
彼女たちは、カトリックの祈り「アンジェラス」を捧げていると考えられています。
ゴーギャンは黄色について、農民たちの孤立した暮らしや信仰に対する自身の感情を表現したと説明しています。
黄色い畑と黄色いキリスト。
その二つを重ねることで、宗教的な存在を農民たちの日常の中に溶け込ませたのです。
キリストの死と、秋の収穫

背景に広がるのは、黄色や赤に染まった秋の田園風景。
秋の収穫を迎えた田園風景には、キリストの死と再生を重ね合わせる解釈もあります。
キリストの死を描きながら、背景には収穫の季節を置く。
そこには、死と再生を結びつける象徴的な意味が読み取れます。
また、輪郭線を強調し、色を大胆に塗り分けた表現は、ゴーギャンが追求した「総合主義」と呼ばれる画風の特徴です。
キリストを黄色く描いたのは、奇抜さを狙っただけではありません。
その色には、ブルターニュの大地と、そこに暮らす人々の信仰が重ねられていたのです。
(文:Indiebase編集部)
