Indiebase編集部です。
巨大な葉が生い茂るジャングルの中に、なぜか一台のソファが置かれています。
そこには裸の女性が横たわり、片手を伸ばしています。
周囲にはライオンや鳥、象、ヘビなどが潜み、暗がりでは笛を吹く人物が立っています。
フランスの画家アンリ・ルソーが描いた『夢』(1910年、ニューヨーク近代美術館所蔵)。
都会の部屋にあるはずのソファが、熱帯のジャングルに置かれている。
この奇妙な組み合わせには、ルソー自身による説明が残されています。
ソファに寝そべる女性は誰なのか
女性の名前はヤドヴィガ。ルソーがかつて愛したポーランド人女性をモデルにしたとされています。
彼女は赤いソファに横たわり、周囲の植物や動物たちを見つめています。
しかし、実際にジャングルへ来たわけではありません。
ルソーは、この作品について詩を書き、ソファで眠る女性が夢の中で美しい森を見ていると説明しました。
つまり、描かれているのは現実の風景ではなく、女性が眠りながら見ている夢の世界なのです。
ジャングルに隠された動物たち

この作品には、さまざまな動物が描かれています。
葉の陰から顔をのぞかせるライオン、枝にとまる鳥、奥に見える象、そして笛吹きの近くをうねるヘビ。
植物も細かく描き分けられ、50種類以上の植物が表現されているといわれています。
しかし、ルソーは実際に熱帯のジャングルを訪れたことがありませんでした。
パリの植物園や動物園、図鑑などから着想を得て、独自の熱帯世界を作り上げたのです。
現実の観察と想像力を組み合わせたところに、ルソーの絵画の特徴があります。
晩年に描かれた最大級の作品
ルソーは税関職員として働きながら絵を描き、40代になってから本格的に画家として活動しました。

遠近法や人物の描写が独特だったため、当初は批判されることもありました。
しかし、その自由な表現はピカソをはじめとする前衛芸術家たちから高く評価されます。
『夢』は1910年のアンデパンダン展に出品され、同年に亡くなったルソーの最後の大作となりました。
現実には存在しないジャングルを、実際に見てきたかのように描く。
ルソーが生涯追求した独特の世界観が、この一枚に凝縮されています。
(文:Indiebase編集部)
