Indiebase編集部です。
天まで届きそうな巨大な塔。
無数の窓やアーチが並び、足場の上では小さな人間たちが忙しく働いています。
フランドルの画家ピーテル・ブリューゲル(父)が描いた『バベルの塔』(1563年、ウィーン美術史美術館所蔵)。
圧倒的なスケールを誇るこの建築物には、恐ろしい結末が待っています。
人間たちは神に近づこうと塔を建てましたが、神は彼らの言葉を通じなくしてしまったのです。
なぜ人類は巨大な塔を建てたのか
『バベルの塔』の物語は、旧約聖書の「創世記」に登場します。
かつて人類は、誰もが同じ言葉を話していました。
人々は力を合わせ、天まで届く塔を建て、自分たちの名を世に知らしめようとします。
しかし、神は人間たちの行動を見て、彼らの言葉を混乱させました。
互いの言葉が通じなくなった人々は協力できなくなり、塔の建設を断念します。
これが、世界にさまざまな言語が存在する理由を説明する聖書の物語です。
バベルの塔は、人間の傲慢さと、その限界を象徴する建築物なのです。
実はローマのコロッセオがモデルだった

ブリューゲルの『バベルの塔』をよく見ると、巨大な円形建築に無数のアーチが重なっています。
その姿は、古代ローマの円形闘技場「コロッセオ」によく似ています。
ブリューゲルは若い頃にイタリアを訪れており、ローマの建築から影響を受けました。
かつて永遠の繁栄を誇ったローマ帝国も、やがて衰退しました。
コロッセオを思わせる塔の姿には、どれほど巨大な文明も永遠には続かないという意味が重ねられています。
さらに塔をよく見ると、各階の構造が不規則で、建物全体がどこか傾いているようにも見えます。
完成する前から、巨大建築には不安定さが漂っているのです。
絵の左下に描かれた、もう一人の主役

画面左下には、豪華な衣装をまとった男と、その前にひざまずく人々が描かれています。
この男は、伝承でバベルの塔の建設を命じたとされる王ニムロドです。
王の前で頭を下げる石工たち。その背後では、何百人もの労働者が巨大な塔を築いています。
港には建築資材を運ぶ船が集まり、塔の周囲には足場やクレーンが張り巡らされています。
ブリューゲルは、16世紀の建設現場を思わせる細部まで描き込みました。
人間の技術力と組織力のすさまじさを表現する一方で、その努力が実を結ばない運命も暗示しています。
天に届くほどの塔を造る力があっても、人間は互いの言葉が通じなければ何も成し遂げられない。
『バベルの塔』は、人類の偉大さと愚かさを同時に描いた名画です。
(文:Indiebase編集部)
