CULTURE

七つの大罪とは?7つの罪の意味や順番、対応する悪魔をわかりやすく解説

Indiebase編集部です。

傲慢、強欲、嫉妬、憤怒、色欲、暴食、怠惰。

人間の心に潜む7つの欲望や弱さを、キリスト教では「七つの大罪」と呼んできました。

自分を他人より優れていると思い込む。欲しいものを際限なく求める。他人の幸福を妬み、怒りに身を任せる。

どれも特別な悪人だけが持つ感情ではありません。誰もが日常のなかで経験する、ごく身近な感情です。

しかし、中世ヨーロッパでは、こうした感情が人間を罪へと導く危険なものとして考えられていました。

七つの大罪は、ダンテの『神曲』やヨーロッパの宗教画に登場し、現代でも漫画やゲーム、映画の題材として使われています。

今回は、七つの大罪それぞれの意味や歴史、悪魔との関係、そして文学や絵画での描かれ方を解説します。

七つの大罪とは?7つの罪の意味と一覧

七つの大罪(Seven Deadly Sins)とは、キリスト教の伝統において、人間をさまざまな罪へと導く根本的な悪徳を7つに分類したものです。

一般的には、次の7つを指します。

1. 傲慢(Pride)

自分を過度に高く評価し、他人を見下したり、神よりも自分を優先したりすること。

2. 強欲(Greed)

富や財産、権力などを必要以上に求め、際限なく手に入れようとすること。

3. 嫉妬(Envy)

他人の幸福や成功を妬み、その人が持つものを羨んだり、不幸を望んだりすること。

4. 憤怒(Wrath)

怒りに支配され、他人への憎しみや復讐心を抑えられなくなること。

5. 色欲(Lust)

性的な欲望に過度に支配され、理性や道徳的な判断を失うこと。

6. 暴食(Gluttony)

食べ物や飲み物を必要以上に求め、節度を失って消費すること。

7. 怠惰(Sloth)

果たすべき務めや善い行いを避け、精神的な無関心や無気力に陥ること。

なお、七つの大罪には絶対的な順番があるわけではありません。文献や作品によって並び方が異なる場合があります。

また、「大罪」という名前から、殺人や窃盗のような重大犯罪を連想するかもしれません。

しかし、七つの大罪は具体的な犯罪の一覧ではなく、人間を罪へと向かわせる心の傾向を表しています。

七つの大罪は誰が決めたのか?成立の歴史

七つの大罪は、聖書にそのまま7項目の一覧として書かれているわけではありません。

現在知られている分類は、初期キリスト教の修道士や神学者たちによって、長い時間をかけて形づくられました。

始まりは4世紀の「8つの悪い思い」

七つの大罪の原型をつくった人物の一人が、4世紀の修道士エヴァグリオス・ポンティコスです。

エヴァグリオス・ポンティコス

彼は修道生活を妨げる「8つの悪い思い」を分類しました。

その内容は、暴食、色欲、強欲、悲しみ、怒り、アケディア(霊的な無気力)、虚栄、傲慢です。

現在の七つの大罪とは異なり、当初は8つに分類されていました。

その後、修道士ヨハネス・カッシアヌスらを通じて、この考え方が西方キリスト教にも伝えられます。

グレゴリウス1世によって7つに整理された

6世紀末、ローマ教皇グレゴリウス1世は、従来の悪徳の分類を再編しました。

グレゴリウス1世

悲しみや虚栄などの扱いを変え、嫉妬を加えることで、後の七つの大罪につながる分類が整えられました。

さらに13世紀には、神学者トマス・アクィナスが、こうした悪徳がほかの罪を生み出す仕組みを論じています。

トマス・アクィナス

このように、七つの大罪は一人の人物が突然考案したものではなく、修道生活の経験やキリスト教神学の発展から生まれた分類です。

なぜ「7」という数字なのか?

キリスト教では、7という数字が重要な意味を持っています。

天地創造の7日間、7つの秘跡、ヨハネの黙示録に登場する7つの教会など、聖書やキリスト教の伝統には7という数字が繰り返し登場します。

ただし、七つの大罪が7項目になった直接の理由を、数字の象徴性だけで説明することはできません。

もともと8つだった悪徳が、神学的な整理を経て7つにまとめられたという歴史があります。

七つの大罪と悪魔の関係

七つの大罪は、現代のファンタジー作品では、それぞれ特定の悪魔と結びつけられることがあります。

よく知られている組み合わせが、次の7つです。

  • 傲慢:ルシファー
  • 強欲:マモン
  • 嫉妬:レヴィアタン
  • 憤怒:サタン
  • 色欲:アスモデウス
  • 暴食:ベルゼブブ
  • 怠惰:ベルフェゴール

この対応関係は、16世紀の神学者・著述家ペーター・ビンスフェルトが1589年に著した悪魔に関する書物で示した分類として知られています。

ただし、聖書に七つの大罪と7体の悪魔の対応表が書かれているわけではありません。

また、キリスト教のすべての教派が、この悪魔の分類を正式な教義として採用しているわけでもありません。

七つの大罪そのものは、悪魔の名前を覚えるための分類ではなく、人間の内面に潜む悪徳を理解するためのものです。

ルシファーはなぜ傲慢の悪魔なのか?

七つの大罪のなかでも、特に重要視されてきたのが「傲慢」です。

キリスト教の伝統では、ルシファーは神に反逆して堕落した天使と結びつけられてきました。

『堕天使』(カバネル)

神に従うことを拒み、自らを高めようとしたという解釈から、傲慢の象徴とされたのです。

ただし、ルシファーが堕天使の名前として定着したのは、聖書の記述に対する後世の解釈によるものです。

こうした伝承は、後の文学や美術にも大きな影響を与えました。

七つの大罪は文学や絵画でどう描かれたのか?

ダンテ『神曲』|煉獄で浄化される7つの罪

七つの大罪を扱った文学作品として有名なのが、イタリアの詩人ダンテ・アリギエーリによる『神曲』です。

ダンテ・アリギエーリ

14世紀初頭に成立したこの作品は、地獄、煉獄、天国を巡る壮大な物語です。

『煉獄篇』では、煉獄山が7つの段階に分かれ、それぞれの場所で罪を犯した人々が浄化を受けています。

その順番は、傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲です。

例えば、傲慢な人々は重い石を背負って身をかがめ、怒りに支配された人々は煙のなかで苦しみます。

ここで重要なのは、煉獄が永遠の罰を受ける地獄とは異なることです。

煉獄にいる魂は、罪を浄化することで天国へ向かうことができます。

ダンテは七つの大罪を、人間が克服すべき精神的な弱さとして描きました。

ヒエロニムス・ボス『七つの大罪と四終』

七つの大罪を絵画で表現した有名な作品が、『七つの大罪と四終』(1500年頃、マドリード・プラド美術館所蔵)です。

この作品は長くヒエロニムス・ボスの作品として知られてきましたが、現在では作者について議論があります。

中央にはキリストの姿が描かれ、その周囲に七つの大罪を表す場面が円形に配置されています。

傲慢は鏡を見つめる女性、暴食は食べ物や酒に夢中になる人々、憤怒は争う人々など、日常生活の場面を通して表現されています。

画面の四隅には、死、最後の審判、天国、地獄という「四終」が描かれています。

七つの大罪が、特別な怪物や悪魔ではなく、日常の人間の行動として描かれている点が特徴です。

ピーテル・ブリューゲル『七つの大罪』

16世紀の画家ピーテル・ブリューゲル(父)は、七つの大罪を題材にした版画シリーズのための下絵を制作しました。

それぞれの作品には、罪を象徴する人物や怪物、奇妙な生き物が登場します。

例えば『暴食』では、食べ物を際限なく求める人々や異様な生物が描かれ、人間の欲望が怪物的な姿に変えられています。

ブリューゲルは、七つの大罪を単なる宗教的な教訓としてではなく、幻想的で不気味な世界として表現しました。

その奇怪な造形には、先行するヒエロニムス・ボスの影響も見られます。

七つの大罪と七つの美徳の違い

キリスト教には、七つの大罪と対比される「七つの美徳」という考え方もあります。

代表的なものに、謙遜、寛大、慈愛、忍耐、純潔、節制、勤勉があります。

例えば、傲慢に対して謙遜、強欲に対して寛大、憤怒に対して忍耐というように、それぞれの悪徳を克服するための徳として考えられます。

ただし、七つの美徳には複数の分類があり、信仰・希望・愛という3つの対神徳と、思慮・正義・勇気・節制という4つの枢要徳を合わせた分類も広く知られています。

そのため、七つの大罪と七つの美徳が、すべてのキリスト教文献で一対一に対応しているわけではありません。

七つの大罪は、人間が陥りやすい悪徳を分類したものです。

傲慢や嫉妬、怒り、怠惰などは、現代の人間にとっても身近な感情でしょう。

中世の神学者たちは、そうした感情がどのように人間の行動を変え、ほかの罪を生み出すのかを考えました。

ボスやブリューゲルが描いた七つの大罪にも、怪物だけでなく、食事をする人、鏡を見る人、争う人といった日常的な姿が登場します。

(文:Indiebase編集部)

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