Indiebase編集部です。
アメリカ出身の画家メアリー・カサットが描いた『青い肘掛け椅子に座る少女』(1878年、アメリカ・ワシントンD.C.のナショナル・ギャラリー所蔵)。鮮やかな青い椅子に、一人の少女がだらりと寝そべっています。
脚を投げ出し、片腕を頭の後ろに回した姿は、どう見ても行儀がよいとはいえません。隣の椅子では小さな犬が丸くなって眠っています。
実はこの絵、当時の子どもの肖像画としては、かなり大胆な作品でした。
お行儀のよい子どもを描かなかった
それまでの肖像画では、子どもを愛らしく、理想化された姿で描くことが少なくありませんでした。

しかしカサットが描いた少女は、椅子に深く沈み込み、退屈そうな表情を浮かべています。

誰かに見せるための立派な姿ではなく、大人の目を気にしていない、ごく自然な子どもの姿です。
カサットは、母親と子どもの日常を数多く描いた画家として知られていますが、子どもを理想化せず、一人の人間として捉える視点も持っていました。
この作品では、少女の気だるい姿勢そのものが主役になっています。
実はドガも制作に関わっていた
この絵には、もう一つ興味深い事実があります。
カサットと親交の深かった印象派の画家エドガー・ドガが、制作に手を加えていたのです。
ドガは作品の背景に手を加えたと考えられています。二人の画家の交流を物語る、興味深いエピソードです。
また、少女を画面の中央ではなく右側に配置し、左側には空いた椅子と眠る犬を描くという構図も特徴的です。
斜めに並ぶ椅子と大胆な余白によって、まるで部屋の一角を偶然切り取った写真のような印象が生まれています。
少女の正体は、ドガの友人の娘だった?

モデルとなった少女は、ドガの友人の娘だったと伝えられていますが、その身元は確定していません。
隣で眠る小型犬は、カサットが飼っていたベルギー・グリフォンの「バティスト」です。
この作品は1879年の第4回印象派展への出品が予定されていましたが、実際には展示されませんでした。理由については、現在もはっきりしていません。
少女は画家の方を見つめることもなく、犬も眠ったまま。誰かのために姿勢を正そうとする気配はありません。
大人が望む「かわいい子ども」ではなく、退屈すればだらける、ありのままの子ども。その姿を堂々と描いたところに、カサットの新しさがありました。
(文:Indiebase編集部)
