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オラース・ヴェルネ「レノーレのバラード」とは?『ドラキュラ』にも引用された怪奇画を解説

Indiebase編集部です。

今日紹介するのは、フランスの画家オラース・ヴェルネが1839年に描いた「レノーレのバラード」。黒馬にまたがる甲冑の騎士と、その背にしがみつく女性。よく見ると、兜の中に覗いているのは人の顔ではなく髑髏です。

迎えに来た婚約者は、死んでいた

元になっているのは、ドイツの詩人ビュルガーが1770年代に発表したバラード「レノーレ」です。七年戦争が終わっても、レノーレの婚約者ヴィルヘルムは帰ってきません。絶望した彼女のもとに、ある夜、馬に乗った婚約者らしき男が現れ、「夜明け前に結婚しよう」と彼女を連れ出します。2人は夜の荒野を疾走しますが、たどり着いた先は墓地。騎士は骸骨の姿をあらわし、花嫁のベッドとして用意されていたのは墓穴でした。ヴェルネが描いたのは、この疾走の場面です。

戦争画家が描いた、唯一無二の怪奇画

ヴェルネはナポレオン戦争などを題材にした戦争画で名を馳せた、当時のフランスで指折りの人気画家です。勇壮な戦場の画家が、亡霊と駆け落ちする乙女という怪奇趣味の主題を描いたという点で、この絵は彼のキャリアの中でも異色の一枚といえます。「レノーレ」はフランスでも人気が高く、ユゴーやネルヴァル、スタンダールらが翻訳・翻案を手がけていました。ロマン主義の時代、この不気味なバラードはヨーロッパ中の芸術家を惹きつけていたのです。

「死者の旅は速い」

この詩には、後世に残る有名な一節があります。疾走する馬上で骸骨の騎士が繰り返す「死者の旅は速い(Die Toten reiten schnell)」。ブラム・ストーカーは1897年の小説『ドラキュラ』の冒頭、ドラキュラ城へ向かう主人公の場面でこの一節をそのまま引用しました。ヴァンパイア文学の金字塔の入り口に、このバラードが刻まれているわけです。ポーの詩「レノーア」や「大鴉」への影響を指摘する声もあり、ゴシックホラーの源流のひとつとして、今も名前が挙がり続けています。

この絵は現在、フランスのナント美術館が所蔵しています。

(文:Indiebase編集部)

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