『Hollow Knight』『Silksong』の紹介文で、Steamのタグで、ゲーム実況のタイトルで。「メトロイドヴァニア」という長い横文字を目にする機会は年々増えています。なんとなく「探索するアクション」というイメージはあっても、言葉の由来や正確な意味を知る人は意外と少ないはずです。
この記事では、メトロイドヴァニアというジャンルの定義、名前の語源、面白さの仕組み、そして代表作までまとめて解説します。

メトロイドヴァニアとは「探索型2Dアクション」のこと
メトロイドヴァニアとは、広大で入り組んだマップを探索する、横スクロール型のアクションゲームを指すジャンル名です。核となる特徴は次の3つです。
・一枚につながった広大なマップ:ステージクリア型ではなく、全体が一つの世界として繋がっている
・能力の獲得で行動範囲が広がる:二段ジャンプや壁登りなどの新能力を得ると、以前は行けなかった場所に進めるようになる
・行き来(バックトラック)が前提の設計:「あの怪しい場所、今なら行けるのでは」と過去のエリアに戻る楽しみが組み込まれている
つまりメトロイドヴァニアの面白さは、戦闘そのものより「地図が頭の中で育っていく感覚」にあります。閉ざされた扉の先を想像し、能力を得て、記憶を頼りに戻り、世界が開けていく。この探索の快感がジャンルの心臓部です。

語源は『メトロイド』+『キャッスルヴァニア』
メトロイドヴァニア(Metroidvania)は、日本生まれの2つのゲームシリーズの名前を組み合わせた造語です。
・メトロイド(Metroid):任天堂の探索型アクション。1986年の初代で非直線的な探索の原型を作り、1994年の『スーパーメトロイド』でジャンルの核となるスタイルを完成させたとされます

・キャッスルヴァニア(Castlevania):コナミ『悪魔城ドラキュラ』シリーズの海外名。初期はステージクリア型でしたが、1997年の『悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲』で探索型へと大きく舵を切りました

『悪魔城ドラキュラ』(Nintendo Storeより)
転機となった『月下の夜想曲』は、広大な悪魔城を自由に行き来しながらレベルアップやアイテム収集で強くなっていく設計で、結果として『メトロイド』と同じ「探索型」のスタイルに行き着きました。この「メトロイドっぽい悪魔城」を従来のステージクリア型と区別するため、海外のファンが呼び始めた俗称がメトロイドヴァニアです。つまり、公式が決めたジャンル名ではなく、ファンの言葉が世界標準になったという経緯を持っています。日本産の2作品の名前が合体した言葉が、海外で生まれて逆輸入されたというのも面白いところです。
なお、興味深いことに『月下の夜想曲』の開発陣が参考にしたのは『メトロイド』ではなく『ゼルダの伝説』の探索・謎解きだったと、後年のインタビューで語られています。ゼルダの文法を2Dアクションに落とし込んだら、結果的にメトロイドと同じ場所に辿り着いた。名作の設計思想が交差して一つのジャンルが生まれた、ゲーム史でも屈指の面白いエピソードです。
なぜインディーゲームの主戦場になったのか
現在、メトロイドヴァニアは大手メーカーよりもインディーシーンで盛んなジャンルです。理由ははっきりしています。
1. 2Dだから小規模開発と相性が良い
3Dの大作に物量で挑まなくても、ドット絵や手描きの2Dで世界観とレベルデザインの質を勝負できます。2004年、開発者・天谷大輔氏がほぼ一人で作り上げた『洞窟物語』は、個人開発でもこのジャンルの傑作が作れることを証明し、後のインディーブームの先駆けになりました。
2. レベルデザインの妙が作家性になる
どこで能力を渡し、どこに近道を隠し、どう迷わせて、どう導くか。マップ設計そのものが開発者の個性になるため、「この作者の設計は美しい」という評価軸が成立します。大資本の物量ではなく、設計の知性で戦えるジャンルなのです。
3. 一本で長く遊べる満足感
探索型の構造は自然とプレイ時間が伸び、クリア後の収集要素とも好相性です。価格に対する満足度が高くなりやすく、口コミ評価に繋がりやすい構造を持っています。

代表作で知るメトロイドヴァニア
原点を知るなら
・スーパーメトロイド:ジャンルの核を完成させた金字塔
・悪魔城ドラキュラX 月下の夜想曲:「ヴァニア」側の原点にして、いまなお色褪せない傑作
インディーの傑作
・洞窟物語:個人開発の可能性を切り開いた歴史的作品
・Hollow Knight:滅びた虫の王国を描く、現代メトロイドヴァニアの頂点の一つ
・Hollow Knight: Silksong:世界を待たせに待たせた続編
・Ori and the Blind Forest / Ori and the Will of the Wisps:映像美と感動の物語で知られる名作
・Bloodstained: Ritual of the Night:『月下の夜想曲』を手がけた五十嵐孝司氏による精神的続編

メトロイドヴァニアという言葉のルーツ(メトロイド+月下の夜想曲)を知ってから遊ぶと、現代の作品がどの要素を受け継ぎ、どこを進化させたのかが見えてきて、探索が一段と味わい深くなります。
よくある質問
Q. メトロイドヴァニアとソウルライクは何が違う?
軸が違います。メトロイドヴァニアは「マップ探索と能力による開放」が核で、ソウルライクは「高難度の戦闘と死のリスク管理」が核です。ただし『Hollow Knight』のように両方の性質を持つ作品も多く、掛け合わせは現代インディーの定番になっています。
Q. 3Dのゲームでもメトロイドヴァニアと呼ばれる?
呼ばれることがあります。探索・能力開放・バックトラックという構造が本質なので、視点が3Dでも設計思想が同じなら「3Dメトロイドヴァニア」と表現されます。ただし伝統的には2D横スクロールを指すことが多い言葉です。
Q. 初心者におすすめの一本は?
『Ori and the Blind Forest』は道標が丁寧で映像も美しく、入口として最適です。歯応えを求めるなら『Hollow Knight』へ。原点を味わいたいなら『月下の夜想曲』は今遊んでも驚くほど快適です。
Q. なぜ「ヴァニア」だけ略されるの?
Castlevania(キャッスルヴァニア)の後半を取った形です。Metroid+Castlevaniaをそのまま繋げると長すぎるため、語呂の良い「Metroidvania」に落ち着いたとされます。日本ではさらに略して「メトヴァニ」と呼ぶ人もいます。
まとめ
メトロイドヴァニアとは、『メトロイド』と『キャッスルヴァニア(悪魔城ドラキュラ)』という日本産2シリーズの名前から生まれた、探索型アクションのジャンル名です。海外ファンの俗称が世界標準のジャンル名になり、いまやインディーゲームの主戦場として傑作が生まれ続けています。
閉ざされた扉の先を想像しながら、頭の中の地図を育てていく。この独特の快感は、一度ハマると抜け出せません。まだ未体験なら、虫の王国か、月夜の悪魔城か、光の森か。最初の一歩はどこからでも大丈夫です。
(文:Indiebase編集部)
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