Indiebase編集部です。
薄明るい夜空の下、男女が腕を組んで踊っています。
民族衣装をまとった人々が集まり、村全体が祭りの熱気に包まれています。
スウェーデンの画家アンデシュ・ゾルンが描いた『真夏の夜の踊り』(1897年、ストックホルム国立美術館所蔵)。
実はこの絵、画家自身が準備に関わった夏至祭を描いた作品なのです。
真夜中なのに、空が明るい
スウェーデンでは、夏至の頃に「ミッドサマー」と呼ばれる祭りが開かれます。
一年で最も昼が長いこの時期、北欧の夜はなかなか暗くなりません。
人々は花や葉で飾った柱を立て、音楽に合わせて踊ります。
絵の右奥に見える柱も、夏至祭の象徴であるメイポールです。

ゾルンが描いたのは、そんな祭りの夜。
空はまだ明るいのに、村人たちは夜通し踊り続けています。
祭りの柱を用意したのは、画家本人だった
ゾルンは1896年、故郷のダーラナ地方に戻りました。
彼は地域の伝統文化を大切にし、村の祭りにも積極的に関わります。
実は、絵に登場するメイポールを村に贈ったのもゾルン自身でした。
画家の回想によれば、真夜中に使用人のヴェルネルが柱を立てると、音楽が始まりました。
若者たちは手をつなぎ、柱の周りや家々の庭を踊りながら進んでいきます。
踊りはその後も続き、夜明けまで終わらなかったといいます。
ゾルンは、この忘れられない夜を絵に残したのです。
祭りの主役は、柱ではなく人々だった

興味深いのは、メイポールが画面の端に追いやられていることです。
中央に大きく描かれているのは、腕を組んで踊る男女。
白いブラウスや赤い帯が、薄暗い風景の中で浮かび上がっています。
ゾルンが表現したかったのは、祭りの飾りではなく、踊る人々の熱気と夏の夜の光でした。
作品は1903年、スウェーデンの国立美術館に寄贈されています。
画家が自ら祭りを支え、その一夜を絵に残した。
『真夏の夜の踊り』は、故郷の文化を愛したゾルンならではの作品です。
(文:Indiebase編集部)
