ART

シェンク「苦悩」とは?7万5000点の中から2度1位に選ばれた“母羊の絵”

Indiebase編集部です。

今日紹介するのは、フランス生まれのデンマーク人画家アウグスト・フリードリヒ・シェンクが1878年に描いた「苦悩」。雪原に立つ1匹の母羊が、足元で動かなくなった子羊のそばで、空に向かって鳴いています。周りを取り囲むのは、羽を光らせた大量の烏。子羊の口元からは、雪を汚す一筋の血がにじんでいます。

タイトル通りの絵

この絵、余計な装飾がありません。母羊の悲しみ、烏たちの静かな不穏さ、雪の白さににじむ血の赤。すべてが「苦悩」という一語のために置かれているような画面です。シェンクは動物画を専門とする画家で、厳しい冬を生き抜こうとする羊の姿を繰り返し描いてきました。この絵もその延長線上にあるのですが、単なる動物画として見る人は少なく、母羊の健気さと烏の集団性に、人間の世界の何かを重ねて見る人が昔から多いようです。

「苦悩」

美術館の”投票”で2度優勝

この絵は1880年、設立からまだ日の浅かったオーストラリア・メルボルンのビクトリア国立美術館(NGV)に購入され、以来ずっと同館の所蔵品です。NGVは所蔵する7万5000点以上の作品の中から人気投票を実施したことがあり、この絵は1906年と2011年、100年以上の時間を挟んで2度とも1位に選ばれています。

一気に有名になったのは、ここ数年

長らく「知る人ぞ知る」寄りの1枚だったこの絵は、近年SNSで急に注目を集めるようになりました。2020年代に入ってからTikTokなどで頻繁にシェアされ、19世紀当時よりも今のほうが、もしかしたら多くの人の目に触れているかもしれません。発表当初から「感傷的すぎる」「演出が大げさ」という声もあったようですが、その分かりやすい強さこそが、140年以上経った今もこの絵の前で人の足を止めさせているのだと思います。

(文:Indiebase編集部)

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