誰もいない深夜のショッピングモール。蛍光灯だけが灯る無人の廊下。見慣れているはずなのに、なぜか背筋がざわつく空間の画像を、SNSで一度は目にしたことがあるはずです。それが「リミナルスペース」です。
この記事では、リミナルスペースという言葉の意味と語源、なぜ人は「懐かしいのに怖い」と感じるのか、代表的な実例、そしてリミナルスペースを実際に歩けるゲームまで、まとめて解説します。
リミナルスペースとは「境界にある空間」のこと
リミナルスペース(liminal space)とは、本来は人が行き交うはずの場所が無人のまま存在している、どこか現実感の希薄な「境界の空間」を指す言葉です。「リミナル(liminal)」は「境界の・過渡期の」を意味する英語で、ラテン語の「limen(敷居)」が語源です。
ポイントは、リミナルスペースが「ある場所からある場所への通過点」であることです。廊下、階段、待合室、駐車場、ホテルのロビー。どれも「そこに留まるための場所」ではなく「通り過ぎるための場所」です。通過点であるはずの空間に、誰もいない状態で立ち尽くすとき、人は奇妙な違和感を覚えます。この違和感こそがリミナルスペースの本質です。
もともとは2019年頃、海外掲示板に投稿された無人空間の画像群からインターネット・ミームとして広がり、「Backrooms(バックルーム)」という創作ホラー文化と結びついて世界的なムーブメントになりました。日本でも2020年代以降、SNSや動画サイトを通じて急速に浸透しています。

なぜ「懐かしいのに怖い」のか
リミナルスペースの画像を見たときの感情は、単純な恐怖ではありません。多くの人が「怖いのに、なぜか懐かしい」「ずっと見ていたくなる」と表現します。この矛盾した感覚には、いくつかの説明が試みられています。
・人がいるはずの場所に人がいないという「予測とのズレ」が、脳に警戒信号を発生させる
・学校の放課後や深夜のコンビニなど、個人的な記憶と結びついた空間が多く、ノスタルジーを同時に刺激する
・「通過点」に留まることは日常にはない経験のため、時間が止まったような非現実感を生む
心理学で「不気味の谷」と呼ばれる現象が「人間に似ているが人間ではないもの」への違和感だとすれば、リミナルスペースは「日常に似ているが日常ではない空間」への違和感だと言えます。見慣れた景色が、たった一つの要素(人の不在)でまったく別の顔を見せる。この落差が、リミナルスペース特有の引力 を生んでいます。

代表的なリミナルスペースの実例
リミナルスペースとしてよく挙げられるのは、次のような場所です。
・深夜の無人のショッピングモール、閉店後のスーパー
・ホテルの長い廊下、誰もいないロビー
・放課後の学校、休日のオフィス
・蛍光灯だけが灯る地下通路や駐車場
・営業時間外の屋内プール
・古いゲームセンターやファミレスの店内
・乗客のいない終電間際の駅ホーム
共通するのは「人工的な空間」「人の気配の残滓」「均質な照明」の3要素です。自然の風景がリミナルスペースと呼ばれることはほぼありません。人間のために作られた空間から人間だけが消えたとき、そこにリミナルな不気味さが宿ります。
日本の風景は、このリミナルスペースと非常に相性が良いとされています。画一的な地下通路、どこにでもあるコンビニ、団地の廊下。世界的なリミナルスペース人気の中で「日本の日常風景」が題材として注目されているのは偶然ではありません。

Backrooms(バックルーム)との関係
リミナルスペースを語るうえで欠かせないのが「The Backrooms」です。これは「現実の壁をすり抜けた者が迷い込む、黄ばんだ壁紙と蛍光灯の無限空間」という海外発の創作設定で、リミナルスペース的な画像とホラー創作が融合して生まれた一大ジャンルです。
Backroomsには「Level」と呼ばれる階層設定や「エンティティ」と呼ばれる存在が創作コミュニティによって拡張され続けており、ゲーム化・映像化も多数行われています。リミナルスペースが「感覚・美学」だとすれば、Backroomsはそれを「物語・世界観」に発展させたものだと整理できます。

リミナルスペースを体験できるゲーム
リミナルスペースの魅力を最も直接的に味わえるのが、実はゲームです。画像は「見る」ことしかできませんが、ゲームなら誰もいない空間を自分の足で「歩く」ことができます。
代表格は日本発の『8番出口』です。無限にループする地下通路で「異変」を探すというルールで、リミナルスペースの不気味さをゲームシステムに落とし込み、世界中でフォロワー作品を生みました。ほかにも無人のプールを探索する作品や、Backroomsを題材にした脱出ゲームなど、リミナルスペース系のゲームは一つのジャンルとして定着しています。

当サイトでは、リミナルスペースを体験できるゲームを厳選した特集記事を公開しています。実際に「あの空間」を歩いてみたい人はこちらをどうぞ。
▶ リミナルスペースゲームおすすめ10選。誰もいない空間の「怖さと美しさ」を体験する異界探索インディー
よくある質問
Q. リミナルスペースは実在する場所?
実在します。特別な場所ではなく、深夜のコンビニや無人の駅など、日常の中に現れる「状態」です。同じ場所でも、人がいれば普通の風景、無人ならリミナルスペースになり得ます。
Q. リミナルスペースとBackroomsは同じもの?
別物です。リミナルスペースは実在の空間にも使える「美学・感覚」の言葉で、Backroomsはそこから派生した「創作ホラーの世界観」です。ただし互いに影響し合っており、混同されて使われることも多くあります。
Q. なぜ日本の風景がリミナルスペースとして人気なの?
画一的で人工的な空間(地下通路、コンビニ、団地)が多く、「見慣れているのに無人」という落差を作りやすいためです。『8番出口』のヒットで、日本の地下通路は世界的なリミナルスペースの象徴になりました。
Q. リミナルスペースの写真はどこで見られる?
SNSで「#liminalspace」「#リミナルスペース」を検索するのが手軽です。ただし他人の撮影した写真には著作権があるため、利用時には注意してください。
まとめ:リミナルスペースは「日常の裏側」への入口
リミナルスペースとは、人のいるはずの場所から人が消えた、境界の空間のこと。懐かしさと不気味さが同居する独特の感覚は、インターネット・ミームから始まり、Backroomsという創作文化を生み、ゲームというジャンルにまで発展しました。
次に深夜のコンビニや無人の廊下を通りかかったら、少しだけ立ち止まってみてください。見慣れた日常が、別の顔を見せる瞬間に気づくはずです。そして「あの感覚」をもっと味わいたくなったら、ゲームの中でいつでも境界の空間を歩けます。
(文:Indiebase編集部)
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