Indiebase編集部です。
白いドレスを着た女性が、小さな舟に座っています。
長い髪を垂らし、片手には鎖。舟の先には十字架と蝋燭が置かれ、周囲には枯れかけた草が茂っています。
イギリスの画家ジョン・ウィリアム・ウォーターハウスが描いた『シャロットの女』(1888年、テート・ブリテン所蔵)。
女性はこれから川を下り、アーサー王の都キャメロットへ向かいます。
しかし、彼女は自分の命が間もなく尽きることを知っています。
鏡越しにしか世界を見られない呪い
この作品は、イギリスの詩人アルフレッド・テニスンが1832年に発表した詩『シャロットの女』を題材にしています。
主人公は、キャメロット近くの島にある塔で暮らす女性です。
彼女には、窓から外の世界を直接見てはならないという呪いがかけられていました。
そのため、鏡に映る景色だけを見ながら、毎日織物を織り続けていました。
しかし、ある日、円卓の騎士ランスロットが塔の近くを通りかかります。
その姿に心を奪われた女性は、思わず窓の外を見てしまいました。
すると鏡が割れ、織物が飛び散ります。
禁じられた行為によって、呪いが発動したのです。
死を覚悟して舟に乗る女性

呪いを受けた女性は塔を出て、小さな舟に乗り込みます。
舟には自分の名前を書き、キャメロットへ向かって川を下り始めました。
ウォーターハウスが描いたのは、まさにその出発の瞬間です。
女性の前には十字架と三本の蝋燭が置かれています。
蝋燭のうち二本はすでに消えており、残る一本だけが燃えています。
これは、彼女に残された命の短さを暗示していると解釈されています。
また、舟に掛けられた織物には、彼女が塔の中で織り続けた世界が描かれています。
ランスロットに会うことはできたのか
詩の結末で、女性はキャメロットにたどり着く前に亡くなります。
舟が都に流れ着くと、人々はその姿を見て驚きました。
そこには、彼女が憧れたランスロットもいました。
しかし、二人が言葉を交わすことはありません。
ランスロットは亡くなった女性の美しさをたたえ、神の祝福を祈ります。
ウォーターハウスは、悲劇の結末ではなく、女性が自ら塔を出る決断をした瞬間を選びました。
呪いによって命を失うと知りながら、彼女は鏡の中の世界を捨て、現実の世界へ踏み出したのです。
(文:Indiebase編集部)
