Indiebase編集部です。
鮮やかな黄色の背景に、一つの骸骨が浮かび上がっています。
大きく開いた眼窩、むき出しの歯、そして緑色に染まった頭蓋骨。骸骨の表面には赤や茶色も混じり、どこか不気味な表情を浮かべているように見えます。
オランダの画家フィンセント・ファン・ゴッホが描いた『骸骨』(1887年、アムステルダム・ゴッホ美術館所蔵)は、パリ滞在中に制作された作品です。
死を象徴する骸骨を、ゴッホはなぜこれほど鮮やかな色彩で描いたのでしょうか。
パリで挑戦した色彩の実験
1886年、ゴッホは弟テオが暮らすパリへ移り住みました。
それまでのゴッホは、『ジャガイモを食べる人々』に代表されるように、茶色や黒を中心とした暗い色彩を使っていました。

しかし、パリで印象派や新印象派の作品に触れると、明るい色彩を積極的に取り入れるようになります。
1887年5月に描かれた『骸骨』も、そうした変化の中で生まれました。
ゴッホは本来ほとんど色のない頭蓋骨を、緑や茶色、赤などを使って表現しています。
ゴッホ美術館によれば、さまざまな色を使いながら説得力のある骸骨を描けるか、という実験的な意図があったと考えられています。
黄色い背景と緑色の骸骨

この作品で印象的なのは、骸骨の周囲に広がる鮮やかな黄色です。
頭蓋骨は緑を中心に描かれ、眼窩や鼻の穴には暗い色彩が使われています。
また、表面には太い筆遣いが残り、骨の立体感が強調されています。
西洋美術では、骸骨は古くから「メメント・モリ(死を忘れるな)」の象徴として描かれてきました。
しかし、この作品では宗教的な物語や死者を悼む人物は登場しません。
ゴッホは、骸骨という題材を使って、色彩と筆遣いそのものを追求したのです。
タバコを吸う骸骨との違い
ゴッホは前年の1886年にも、骸骨を題材にした『火の付いたタバコをくわえた骸骨』を描いています。

こちらは、美術学校の授業を皮肉ったユーモラスな作品として知られています。
一方、1887年の『骸骨』ではタバコも衣服もなく、頭蓋骨そのものが大きく描かれています。
暗い背景に白い骸骨を描いた前年の作品とは対照的に、黄色と緑を大胆に組み合わせた一枚です。
『ひまわり』や『星月夜』で知られるゴッホの鮮やかな色彩は、こうしたパリ時代の実験を通して発展していきました。
