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高い石造りの壁に囲まれた刑務所の中庭。囚人たちが列を作り、同じ場所をぐるぐると歩き続けています。
周囲には看守らしき男たちが立ち、囚人たちの様子を見守っています。中庭にはわずかな光が差し込んでいますが、空はほとんど見えません。
オランダの画家フィンセント・ファン・ゴッホが描いた『刑務所の中庭』(1890年、プーシキン美術館所蔵)は、精神療養中に制作された作品です。
ゴッホ自身が刑務所に入ったわけではありません。しかし、この閉ざされた空間には、当時の画家自身の境遇が重ねられていると考えられています。
精神療養中に描いた刑務所
1889年5月、ゴッホは精神的な不調のため、南フランスのサン=レミにある療養院に入院しました。
療養中も絵画制作を続けていましたが、体調によっては屋外で描くことが難しい時期もありました。
そこでゴッホは、ほかの画家が描いた作品をもとに、新たな絵画を制作するようになります。
『刑務所の中庭』の原作となったのは、フランスの画家ギュスターヴ・ドレが1872年に発表した、ロンドンのニューゲート監獄を描いた版画です。

ドレの白黒の版画をもとに、ゴッホは青や緑を中心とした独自の色彩で描き直しました。
同じ場所を歩き続ける囚人たち

この作品で印象的なのは、囚人たちが円を描くように歩き続けていることです。
彼らは高い壁に囲まれ、どれほど歩いても外へ出ることができません。
中央付近には、帽子をかぶらず、こちらに顔を向けている金髪の男性がいます。
この人物は、ゴッホ自身の姿を重ねたものではないかとも解釈されています。
療養院で自由を制限されていたゴッホにとって、同じ場所を歩き続ける囚人たちの姿は、自らの閉塞感と重なるものだったのかもしれません。
亡くなる5か月前に描かれた作品
ゴッホがこの作品を制作したのは、1890年2月。亡くなる約5か月前のことでした。
同年5月に療養院を退院し、パリ近郊のオーヴェル=シュル=オワーズへ移りますが、7月に37歳で亡くなります。
『刑務所の中庭』には、『ひまわり』や『星月夜』とは異なる、暗く沈んだ色彩が広がっています。
高い壁に囲まれ、出口のない道を歩き続ける囚人たち。その中で、ただ一人こちらに顔を向ける金髪の男性が、ひときわ目を引きます。
(文:Indiebase編集部)
