Indiebase編集部です。
白いドレスをまとい、まっすぐこちらを見つめる少女。
片手を腰に当て、堂々と立っています。

オーストリアの画家グスタフ・クリムトが描いた『メーダ・プリマヴェージの肖像』(1912〜1913年、ニューヨークのメトロポリタン美術館所蔵)。
モデルとなった少女は、わずか9歳でした。
9歳の少女が見せた、堂々たる姿
メーダ・プリマヴェージは、裕福な実業家オットー・プリマヴェージの娘です。
父オットーは、当時のウィーンで前衛的な芸術活動を支援していた人物でした。
1912年、彼はクリムトに娘の肖像画を依頼します。
クリムトは何枚もの下絵を描き、さまざまなポーズを試しました。
そして選んだのが、正面を向き、片手を腰に当てた姿勢です。
幼い少女を愛らしく描くのではなく、意志の強さを感じさせる人物として描いたのです。
ドレスを作ったのは、クリムトの親しい女性
メーダが着ている白いドレスにも、特別な背景があります。
衣装を手がけたのは、ファッションデザイナーのエミーリエ・フレーゲ。
クリムトと生涯にわたって親しい関係にあった女性です。
足元の絨毯には、花や鳥、魚などの模様が散りばめられています。
金色を多用した初期の代表作とは違い、明るい色彩と自由な装飾が印象的です。
なお、クリムトは後にメーダの母オイゲニアの肖像画も制作しています。

『オイゲニア・プリマフェージの肖像』
ナチスに奪われ、海を渡った肖像画

この絵には、もうひとつの歴史があります。
プリマヴェージ家の手を離れた後、絵はウィーンの美術収集家ジェニー・プリツァー・シュタイナーの所有となりました。
しかし、ナチスによるオーストリア併合後、作品は接収されてしまいます。
戦後の1951年、ようやく所有者のもとへ返還されました。
そして1964年、遺族によってニューヨークのメトロポリタン美術館に寄贈されます。
9歳の少女を描いた、一枚の肖像画。
その堂々とした姿は、二度の世界大戦を経た激動の時代をくぐり抜け、今も見る人をまっすぐに見つめています。
(文:Indiebase編集部)
