Indiebase編集部です。
冬の午後6時。空はすでに暗くなり、街灯がともり始めています。
大勢の人々が行き交う通りの上を、高架鉄道の列車が走り抜けていきます。車内からは黄色い光が漏れ、窓越しに乗客の姿も見えます。
アメリカの画家ジョン・スローンが描いた『冬の6時』(1912年)。
100年以上前のニューヨークで、人々が仕事を終えて帰宅する時間帯を描いた作品です。
頭上を走る高架鉄道
この作品で目を引くのが、通りの上に架けられた鉄道です。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、ニューヨークでは高架鉄道が重要な交通手段となっていました。
地下鉄網が十分に発達する以前、高架鉄道は街の主要な移動手段の一つでした。
スローンは、列車を大きく斜めに配置し、その下を歩く人々との対比を描いています。
列車の窓には明かりがともり、地上にも商店や街灯の光が広がっています。
冬の夕暮れでも、都市の活動が止まることはありません。
群衆の一人ひとりが主人公

高架鉄道の下には、帽子やコートを身につけた人々が集まっています。
男性も女性も、それぞれ違う方向を向き、誰かと話したり、足早に歩いたりしています。
特定の人物が中心に描かれているわけではありません。
スローンが関わった「アシュカン派」は、都市の労働者や庶民の日常を積極的に題材とした画家たちのグループです。
それまで絵画の主題になりにくかった、混雑した通りや労働者の生活も描きました。
名もない人々が行き交う、ごく普通の夕方。 それ自体がスローンにとって描く価値のある風景でした。
近代都市の生活を記録した一枚
1912年のニューヨークは、人口が増え、交通網や商業施設が急速に発展していた時代です。
高架鉄道、電灯、商店、そして大量の通勤客。スローンは、近代都市を象徴するものを一つの風景に収めました。
ただし、ここに描かれているのは摩天楼や豪華な建築物ではありません。
人々の頭上を列車が走り、暗くなった通りに明かりがともる、ありふれた日常です。
列車の窓から漏れる光と、通りを埋める人々の姿には、現在の大都市の帰宅風景にも通じるものがあります。
(文:Indiebase編集部)
