Indiebase編集部です。
青く染まった夜空に、巨大な黒い翼を広げる一人の女性。その腕には、眠っている小さな子どもが抱かれています。
女性は唇に指を当て、静かにするように合図しています。周囲には無数の天使たちが漂い、星のような光が夜空を埋め尽くしています。
イギリスの画家エドワード・ロバート・ヒューズが描いた『星々を従えた夜』(1912年頃、バーミンガム美術館所蔵)は、夜を女性の姿で表現した幻想的な作品です。
黒い翼を持つ女性は、恐ろしい存在ではなく、眠りを守るかのように穏やかな表情を浮かべています。
黒い翼を広げる夜の女神
この作品の題材となったのは、イギリスの詩人ウィリアム・アーネスト・ヘンリーの詩『Margaritae Sorori』です。
詩では、夜が星々を従えて訪れ、世界を静かな眠りへと導く様子が描かれています。
ヒューズは、その夜を巨大な翼を持つ女性として表現しました。
彼女が抱く子どもは眠りを象徴する存在として解釈され、周囲を飛ぶ小さな天使たちも、夜の訪れとともに眠りへ向かう世界を思わせます。
背景には無数の星が輝き、女性の衣装からは赤い花びらが舞い落ちています。
黒い翼と深い青色が、静かで神秘的な夜の雰囲気を作り出しています。
ラファエル前派の幻想を受け継いだ画家
エドワード・ロバート・ヒューズは、19世紀後半から20世紀初頭にかけて活躍したイギリスの画家です。
ラファエル前派の影響を受け、神話や文学、夢の世界を題材にした幻想的な作品を数多く制作しました。
特にパステルを用いた繊細な色彩表現で知られ、『夏の夜の夢』や『ワルキューレの夜警』など、神秘的な女性像を描いた作品を残しています。

『星々を従えた夜』でも、青を基調とした柔らかな色彩と、細部まで描き込まれた天使たちが特徴的です。

夜は恐怖ではなく安らぎをもたらす
西洋美術では、夜や闇が死や恐怖と結びつけられることもあります。
しかし、この作品に登場する夜の女性は、眠る子どもを優しく抱き、周囲に静寂をもたらしています。
彼女の背後には星々が輝き、無数の小さな天使たちが夜空を進んでいます。
唇に指を当てる仕草は、眠りを妨げないようにという合図にも見えます。
巨大な黒い翼に包まれた夜の世界を、ヒューズは恐怖ではなく、静けさと安らぎに満ちた場所として描きました。
