Indiebase編集部です。
長いソファに寝そべる少女と、その隣に座る幼い少年。
周囲には色鮮やかな布が散らばり、壁には蝶や植物を思わせる装飾が描かれています。
スペインの画家マリアノ・フォルトゥーニが描いた『日本風のサロンにいる画家の子供たち』(1874年、スペイン・プラド美術館所蔵)。
実はこの絵、日本を訪れたことのないスペインの画家が、日本文化への憧れを込めて描いた作品なのです。
日本趣味がヨーロッパを席巻した時代
19世紀後半、ヨーロッパでは日本の美術や工芸品が大きな人気を集めていました。
浮世絵、着物、扇子、漆器などが芸術家たちを魅了し、「ジャポニスム」と呼ばれる流行が生まれます。
フォルトゥーニも、東洋の美術品や装飾に強い関心を持った画家の一人でした。
この作品では、日本趣味の室内装飾と、ヨーロッパの家庭的な光景が組み合わされています。
ただし、描かれているのは実際の日本の部屋ではありません。
ヨーロッパの画家が想像し、愛した「日本風の空間」なのです。
モデルは画家自身の子供たち

絵に登場するのは、フォルトゥーニの子供たち、マリアとマリアノです。
少女はクッションにもたれかかり、少年はソファの上で静かに座っています。
華やかな衣装や布に囲まれながらも、二人の姿は自然体です。
フォルトゥーニは、細密で豪華な歴史画や風俗画によって高い評価を得ていました。
しかし、この作品では大きな歴史的事件も、劇的な物語も描いていません。
主役は、画家にとって最も身近な存在である自分の子供たち。
装飾的な空間の中に、穏やかな家族の時間が流れています。
36歳で亡くなった画家の、最後の年の作品
フォルトゥーニは1874年、わずか36歳で亡くなりました。
この絵が描かれたのも、まさにその年です。
彼は生前、卓越した技術と華麗な色彩によって、ヨーロッパで大きな成功を収めていました。
一方、この作品には、画面の一部を描き残したような大胆な筆遣いが見られます。
細部まで仕上げられた華やかな作品とは異なる、自由で軽やかな表現です。
日本文化への憧れと、愛する子供たちの日常。
36歳で生涯を閉じた天才画家が、最後の年に残した親密な一枚です。
(文:Indiebase編集部)
