Indiebase編集部です。
上半身は魚、下半身は人間の女性。青い海を背景に、奇妙な生き物が砂浜に横たわっています。まるで人魚の上下を間違えて組み合わせたような姿です。
ベルギーの画家ルネ・マグリットが1934年に描いた『共同発明』。誰もが知る人魚の姿を逆転させることで、美しく神秘的な存在を、どこか不気味な生き物へと変えてしまった作品です。
人魚は、なぜ上半身が人間なのか?
人魚といえば、美しい女性の上半身に魚の尾を持つ姿が一般的です。童話や映画でも、その姿は当たり前のように描かれてきました。
ところが、少し考えてみると不思議です。人間と魚を組み合わせるなら、上半身が魚で、下半身が人間でもいいはずです。
マグリットは、その組み合わせを逆転させました。
すると、美しく神秘的だった人魚は、砂浜に打ち上げられた奇妙な生き物へと変わってしまいます。泳ぐための尾もなく、歩くための脚はあるのに魚の頭を持つ。海でも陸でも生きづらそうな姿です。
「共同発明」というタイトルの皮肉
なぜ、この作品は『共同発明』という題名なのでしょうか。
人魚は実在する生き物ではありません。それでも私たちは、上半身が女性で下半身が魚という姿を、ほとんど疑うことなく受け入れています。
つまり、人魚の姿そのものが、人間たちによって共有されてきた想像上の「発明」なのです。
マグリットは、その常識をひっくり返すことで、私たちが当たり前だと思っているイメージの不思議さを浮かび上がらせました。

「これはパイプではない」を描いた画家
マグリットは、20世紀を代表するシュルレアリスムの画家です。
代表作『イメージの裏切り』では、パイプを描きながら「これはパイプではない」という言葉を添え、絵と現実の違いを問いかけました。

『イメージの裏切り』
『共同発明』も、同じ発想から生まれた作品といえます。人魚の姿を少し変えただけで、私たちの常識は簡単に崩れてしまうのです。
作品は現在、ドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州立美術館に所蔵されています。
(文:Indiebase編集部)
