Indiebase編集部です。
3人の若者が腕をまっすぐに伸ばし、父親が掲げる剣に向かって誓いを立てています。
その表情に迷いはありません。しかし、すぐ隣では女性たちがうなだれ、深い悲しみに沈んでいます。
フランスの画家ジャック=ルイ・ダヴィッドが描いた『ホラティウス兄弟の誓い』(1784年、ルーヴル美術館所蔵)は、古代ローマの伝説を題材にした新古典主義の代表作です。
勇ましい誓いの裏には、家族を引き裂く残酷な物語が隠されています。
敵同士になった親族たち
紀元前7世紀、ローマと隣国アルバ・ロンガは、全面戦争を避けるため、それぞれ3人の戦士を代表として戦わせることにしました。
ローマから選ばれたのはホラティウス家の3兄弟。対するアルバ・ロンガの代表は、クリアティウス家の3兄弟でした。
しかし、両家は婚姻によって結びついていました。
ホラティウス家の妹カミラは敵方の男性と婚約しており、兄弟の一人は敵方の女性サビナと結婚していたのです。
どちらが勝っても、大切な家族を失うことになります。
勝利した兄が妹を殺害する悲劇
決闘ではホラティウス兄弟のうち2人が命を落としますが、生き残った最後の一人が敵の3兄弟を倒し、ローマに勝利をもたらします。
ところが、帰還した兄を迎えた妹カミラは、婚約者の死を知って嘆き悲しみました。
祖国の勝利を喜ばず、敵国の男性を悼む妹に激怒した兄は、剣でカミラを殺害してしまいます。
祖国を救った英雄が、自らの妹を殺す。国家への忠誠と家族への愛情が衝突する、凄惨な結末でした。
フランス革命前夜に生まれた傑作

この作品が完成したのは、フランス革命のわずか5年前です。
ダヴィッドは、直線的で力強い男性たちと、曲線を描くように身を寄せ合う女性たちを対比させ、国家への義務と個人の感情の対立を表現しました。
1785年のパリのサロンで大きな反響を呼び、新古典主義を象徴する作品となります。
なお、兄弟が剣に向かって誓う場面は、古代の記録にそのまま登場するものではなく、ダヴィッドが創作した構図です。
父親が掲げる3本の剣。その一本が、戦いを終えた後、祖国を救った英雄の妹の命を奪うことになります。
(文:Indiebase編集部)
