Indiebase編集部です。
家族の崩壊、喪失の悲しみ、逃れられない不安、そして人間の心に潜む恐怖。アリ・アスターは、従来のホラー映画とは一線を画す独特の演出と、観る者の感情を揺さぶる物語によって、現代映画界で強い存在感を放つ監督です。
長編デビュー作『ヘレディタリー/継承』で注目を集め、続く『ミッドサマー』では、明るい太陽の下で恐怖を描くという斬新な表現に挑戦。その後も、不安と悪夢が入り混じる『ボーはおそれている』、現代社会の分断を描いた『エディントンへようこそ』と、作品ごとに新たな領域へ踏み込んでいます。
今回は、アリ・アスターが監督・脚本を手がけた長編映画4作品を、公開順に紹介します。
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1. ヘレディタリー/継承(2018年)

監督・脚本:アリ・アスター
出演:トニ・コレット、アレックス・ウルフ、ミリー・シャピロ、ガブリエル・バーン
グラハム家の祖母エレンが亡くなったことをきっかけに、娘のアニーとその家族の周囲で不可解な出来事が起こり始めます。祖母の死によって明らかになる家族の秘密、説明のつかない現象、そして次第に追い詰められていく家族たち。平穏だった日常は、逃れられない恐怖へと変わっていきます。
アリ・アスターの長編監督デビュー作であり、現代ホラーを代表する作品のひとつ。突然の恐怖演出に頼るのではなく、家族の不和や喪失感、精神的な圧迫によって観客を追い詰めていく演出が特徴です。物語の随所に配置された不穏な描写が、終盤に向けて恐ろしい意味を持ち始める構成も見事。観終わった後も強烈な印象を残す心理ホラーです。
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2. ミッドサマー(2019年)

監督・脚本:アリ・アスター
出演:フローレンス・ピュー、ジャック・レイナー、ウィリアム・ジャクソン・ハーパー、ウィル・ポールター
家族を突然の悲劇で失った大学生ダニーは、恋人クリスチャンやその友人たちとともに、スウェーデンの奥地で開催される夏至祭を訪れます。美しい自然に囲まれた村では、白い衣装をまとった住民たちが伝統的な儀式を行っていました。しかし、穏やかに見えた祝祭は、次第に異様な姿を現し始めます。
ホラー映画の常識を覆すような、明るい映像と恐怖の組み合わせが最大の特徴。太陽が沈まない白夜の風景、美しい花々、鮮やかな民族衣装といった幻想的なビジュアルの中で、観客は逃げ場のない不安に包まれていきます。カルト的な共同体の恐ろしさだけでなく、喪失や孤独、恋人との関係に苦しむ主人公の心理も重要なテーマとなっています。
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3. ボーはおそれている(2023年)

監督・脚本:アリ・アスター
出演:ホアキン・フェニックス、パティ・ルポーン、エイミー・ライアン、ネイサン・レイン
極度の不安を抱えながら暮らす中年男性ボーは、母親に会うため故郷へ帰ろうとします。しかし、出発前から次々と予想外の出来事に巻き込まれ、帰省の旅は悪夢のような展開へと変わっていきます。現実と妄想の境界が曖昧になる中、ボーは自分自身の過去や母親との関係に向き合うことになります。
『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』で知られるアリ・アスターが、ホラーの枠を大きく飛び越えた異色作。約3時間にわたり、主人公の不安や恐怖をシュールな映像とブラックユーモアで表現しています。何が現実で何が妄想なのか判然としない展開は、まるで他人の悪夢を体験しているかのよう。アリ・アスターの作家性が色濃く表れた、実験的な映画です。
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4. エディントンへようこそ(2025年)

監督・脚本:アリ・アスター
出演:ホアキン・フェニックス、ペドロ・パスカル、エマ・ストーン、オースティン・バトラー
2020年、新型コロナウイルスの感染拡大によって混乱するアメリカ・ニューメキシコ州の小さな町エディントン。マスク着用などの感染対策をめぐり、保安官ジョーと市長テッドの対立が深まっていきます。やがてジョーは市長選への立候補を宣言。町の対立はSNS上の炎上や陰謀論を巻き込み、次第に制御不能な事態へと発展していきます。
アリ・アスターが現代社会の混乱を題材にした、ブラックコメディとスリラーが融合する作品。パンデミック、政治的分断、フェイクニュース、陰謀論といった現実の問題を取り上げながら、人々が互いを理解できなくなっていく恐怖を描いています。超自然的な現象ではなく、現実社会そのものが不気味に変貌していく点が特徴。アリ・アスターの新たな一面を感じられる映画です。
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アリ・アスター作品に共通する魅力とは?
アリ・アスターの映画には、ジャンルや舞台が異なっていても、共通する特徴があります。それは、登場人物が抱える不安や孤独を、観客自身にも体験させるような演出です。
『ヘレディタリー/継承』では家族の秘密と喪失、『ミッドサマー』では悲しみと共同体への帰属、『ボーはおそれている』では極度の不安と母親との関係、そして『エディントンへようこそ』では社会の分断と不信感が描かれています。
また、美しく計算された構図や、不穏な音響、長く続く緊張感も特徴的です。観客に明確な答えを与えず、解釈の余地を残す物語も多く、鑑賞後に考察したくなる作品が揃っています。
ホラー映画の新たな可能性を切り開きながら、現代社会や人間心理へと表現の幅を広げてきたアリ・アスター。まずは代表作の『ヘレディタリー/継承』『ミッドサマー』から、その独特の映画世界に触れてみてはいかがでしょうか。
(文:Indiebase編集部)
