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今日紹介するのは、イギリスの画家G.F.ワッツが1886年に描いた「希望」。目隠しをした女性が地球儀のような球体の上に座り、弦がほとんど切れてしまった竪琴を抱え、かすかに残った音を聞き逃すまいと耳を寄せています。孫娘を亡くした直後に描かれた作品だと伝わっています。
発表当時は不評だった
ワッツはあえて、それまで「希望」の象徴として使われてきたモチーフを避け、意味をあいまいにしたと語っています。発表当初、批評家の評判は芳しくありませんでした。色彩は高く評価されたものの、絵の意味そのものは長らく理解されず、20世紀に入ると人気も下火になっていきます。1886年に2点制作されており、よく知られている方は助手との共作です。
説教から、大統領選のスローガンへ
この絵が再び注目されるのは、まったく別の文脈でした。1959年、キング牧師がこの絵をもとにした説教を行います。1990年には、シカゴの牧師ジェレマイア・ライトが同じ絵を題材に説教を行いました。世界という球体の上で、女性は傷つき、竪琴もほとんど壊れているのに、それでも音を鳴らそうとしている。ライト牧師はそれを「希望する図太さ」と表現しました。この説教を聞いていた信徒の中に、当時まだ若かったバラク・オバマがいました。
オバマはこの言葉を「Audacity of Hope(希望の図太さ)」として自身のフレーズに取り入れ、2004年の民主党大会での基調演説、2006年出版の著書のタイトル、そして2008年の大統領選のテーマとして使い続けます。ネルソン・マンデラも、ロベン島の獄中でこの絵の複製を壁に貼っていたと言われています。
一枚の絵が、キング牧師、マンデラ、オバマという時代も立場も異なる3人を経由して受け継がれてきたことになります。テート・ブリテンの一室で、この絵の前で足を止める人の多くは、画家の名前より先に「Audacity of Hope」というフレーズを知っているかもしれません。
(文:Indiebase編集部)
