Indiebase編集部です。
立派な毛皮のコートを着た男性が、横を向いています。
しかし、顔をよく見ると、何かがおかしい。
大きな鼻は鳥の肉、頬は魚、口元には奇妙な肉の塊。人間の顔に見えたものが、実は食べ物の寄せ集めだったのです。

イタリアの画家ジュゼッペ・アルチンボルドが描いた『法律家』(1566年、スウェーデン国立美術館所蔵)。
一見すると普通の肖像画ですが、その正体は法律家を皮肉った奇妙な人物画です。
顔を作っているのは肉と魚
アルチンボルドは、果物や野菜、花、動物などを組み合わせて人間の顔を描くことで知られています。
『法律家』も、その独創的な表現を用いた作品です。
鼻には鳥の肉、頬には魚、顎には動物の肉が使われています。
さらに、男性が抱える分厚い本は法律書を表しています。
少し離れて見ると威厳のある人物ですが、近づくほど滑稽な姿が浮かび上がります。
社会的地位の高い人物を、食肉の寄せ集めとして描いているのです。
モデルは実在した法律家?
この作品のモデルについては、神聖ローマ皇帝マクシミリアン2世に仕えた法律家ヨハン・ウルリヒ・ツァジウスとする説が知られています。
ツァジウスは皇帝の宮廷で重要な役職を務めた人物でした。
アルチンボルド自身もハプスブルク家の宮廷画家として活動しており、両者には接点がありました。
ただし、モデルがツァジウス本人だったかどうかは確定していません。
法律家という職業そのものを風刺した作品とも考えられています。

宮廷で生まれた奇妙な肖像画
アルチンボルドが活躍した16世紀の宮廷では、珍しい動植物や奇抜な芸術が好まれていました。
彼の作品も、知識や観察力を試す視覚的な遊びとして楽しまれていたと考えられています。
『法律家』は、その遊び心に鋭い風刺を加えた作品です。
立派な服装と法律書によって権威を示しながら、顔は肉や魚で作られている。
肩書きや服装がどれほど立派でも、顔をよく見れば食べ物の寄せ集め。アルチンボルドの風刺は、500年近くたった現在でも十分に伝わります。
(文:Indiebase編集部)
