CULTURE

カラヴァッジョ『ゴリアテの首を持つダヴィデ』とは?切り落とされた首は画家自身の顔だった

Indiebase編集部です。

イタリアの画家カラヴァッジョが描いた『ゴリアテの首を持つダヴィデ』(1610年頃、イタリア・ローマのボルゲーゼ美術館所蔵)。暗闇の中に立つ若者が、切り落とされた男の首を持ち上げています。

首からは血が滴り、男の口は苦しげに開いたまま。一方、勝者であるはずの若者は、誇らしげな表情を見せていません。

実は、この切り落とされた首には、画家カラヴァッジョ自身の顔が描かれていると考えられています。

殺人を犯し、逃亡していた天才画家

カラヴァッジョは、光と闇の劇的な表現で知られるバロック美術の巨匠です。しかし、その人生は暴力沙汰の連続でもありました。

1606年、ローマでラヌッチョ・トマッソーニという男性を殺害。死刑に相当する処罰の対象となったカラヴァッジョは、ローマから逃亡しました。

その後、ナポリ、マルタ、シチリアなどを転々としながら制作を続けます。

そして逃亡生活の末期に描かれたとされるのが、この『ゴリアテの首を持つダヴィデ』です。

旧約聖書では、羊飼いの少年ダヴィデが巨人ゴリアテを倒し、その首を切り落とします。

しかしカラヴァッジョは、勝利の瞬間ではなく、戦いが終わった後の重苦しい場面を選びました。

なぜ自分の首を切り落としたのか?

ゴリアテの顔は、カラヴァッジョ自身の自画像と広く解釈されています。

一方、首を持つダヴィデの顔も、若き日のカラヴァッジョを表しているという説があります。

もしそうなら、この絵は「若い自分が、罪を犯した現在の自分を裁く」という、異様な自画像になります。

さらに注目したいのが、ダヴィデの持つ剣です。

刀身には「H-AS OS」と読まれる文字が刻まれており、「謙虚さは傲慢に勝つ」という意味のラテン語を略したものだという解釈があります。

傲慢さによって破滅した自分自身を、画家はゴリアテに重ねたのでしょうか。

ローマへの帰還を願った「赦しの絵」だった?

この作品は、カラヴァッジョがローマへの帰還を望んでいた時期に制作されたと考えられています。

有力な説では、彼は教皇の甥であり、有力な美術収集家でもあったシピオーネ・ボルゲーゼ枢機卿にこの絵を贈り、恩赦を得ようとしていたとされます。

ただし、制作の詳しい経緯や贈答の目的が確定しているわけではありません。

1610年、カラヴァッジョはローマへ戻ることなく、38歳で亡くなりました。

ダヴィデは切り落とした首を見つめています。その表情には、勝利の喜びよりも、哀れみや悲しみが漂っています。

殺人を犯した画家が、自分自身の首を描いた一枚。それは、赦しを求めるための絵だったのかもしれません。

(文:Indiebase編集部)


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