Indiebase編集部です。
家族の絆、親子の関係、喪失の悲しみ、そして社会の片隅で生きる人々。是枝裕和は、人間の複雑な感情や日常に潜む葛藤を、繊細な映像表現で描き続けてきた日本を代表する映画監督です。
1995年の『幻の光』で長編映画監督デビューを果たし、『誰も知らない』『そして父になる』『海街diary』など数々の名作を発表。2018年には『万引き家族』でカンヌ国際映画祭の最高賞パルム・ドールを受賞し、世界的な評価を確立しました。
近年はフランスで製作した『真実』や、韓国を舞台にした『ベイビー・ブローカー』など海外にも活動の場を広げています。さらに2026年には、ヒューマノイドを家族に迎える夫婦を描いた『箱の中の羊』、藤本タツキの漫画を実写映画化した『ルックバック』を発表しました。
今回は、是枝裕和が監督を務めた長編映画全20作品を、公開順に紹介します。劇映画に加え、劇場公開されたドキュメンタリー映画2作品も取り上げます。
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1. 幻の光(1995年)

監督:是枝裕和
出演:江角マキコ、浅野忠信、内藤剛志、木内みどり
幼い頃から死に対する不安を抱えていた女性ゆみ子は、夫の郁夫と幼い息子に囲まれ、幸せな家庭生活を送っていました。しかし、ある日突然、夫が不可解な死を遂げます。深い悲しみを抱えたゆみ子は、やがて能登半島の小さな漁村に暮らす男性と再婚しますが、亡き夫への思いを完全に断ち切ることはできずにいました。
是枝裕和の長編映画監督デビュー作であり、宮本輝の同名小説を映画化した作品。第52回ヴェネツィア国際映画祭で金のオゼッラ賞を受賞しました。静かな風景と自然光を生かした美しい映像が特徴で、説明的な台詞に頼ることなく、喪失と再生という普遍的なテーマを描いています。是枝監督の作家性を知るうえで欠かせない一本です。
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2. ワンダフルライフ(1999年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:ARATA(井浦新)、小田エリカ、寺島進、内藤剛志
人が亡くなった後、天国へ向かう前に立ち寄る不思議な施設。そこでは、人生で最も大切だった思い出を一つだけ選び、その記憶を映像として再現することになっています。さまざまな人生を歩んできた死者たちは、施設の職員との対話を通して、自分にとって本当に大切だった瞬間を探していきます。
「人生でたった一つの思い出を選ぶなら何か」という独創的な設定を通して、記憶と幸福の意味を問いかける作品。ドキュメンタリーのような自然な会話と、フィクションを組み合わせた演出が特徴です。特別な成功や劇的な出来事だけではなく、何気ない日常の一瞬にも人生の豊かさが宿っていることを感じさせる、温かく哲学的な映画です。
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3. DISTANCE/ディスタンス(2001年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:ARATA(井浦新)、伊勢谷友介、寺島進、夏川結衣
ある新興宗教団体による無差別殺人事件から3年。事件に関わった加害者たちの遺族4人が、命日に湖のほとりへ集まります。しかし、帰ろうとした彼らは車がなくなっていることに気づき、近くの山小屋で一夜を過ごすことに。そこで、事件の関係者だった一人の男と出会い、それぞれが抱えてきた記憶や感情と向き合っていきます。
社会を震撼させた事件の加害者家族という難しい題材を扱った人間ドラマ。是枝監督は、事件そのものの衝撃よりも、残された人々が抱える罪悪感や喪失感、理解できない他者との距離に焦点を当てています。即興的な演技を取り入れた自然な会話と、静かな緊張感が特徴。善悪だけでは割り切れない人間の複雑さを描いた作品です。
4. 誰も知らない(2004年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:柳楽優弥、YOU、北浦愛、木村飛影
東京の小さなアパートで、母親と4人の子どもたちが暮らし始めます。しかし、母親は子どもたちを学校へ通わせず、周囲にもその存在を隠していました。やがて母親が家を離れ、長男の明は幼い弟妹たちの面倒を見ることになります。限られた生活費の中で子どもたちは懸命に日々を過ごしますが、生活は次第に厳しさを増していきます。
実際に起きた事件に着想を得た社会派ドラマ。主演の柳楽優弥は、第57回カンヌ国際映画祭で史上最年少の最優秀男優賞を受賞しました。子どもたちの何気ない日常を丁寧に積み重ねながら、社会から見過ごされる存在の孤独と、生きることの厳しさを浮かび上がらせています。是枝監督の代表作として、国内外で高い評価を受けた作品です。
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5. 花よりもなほ(2006年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:岡田准一、宮沢りえ、古田新太、浅野忠信
江戸時代、父の仇を討つために江戸へやってきた若き武士・青木宗左衛門。しかし、宗左衛門は剣術が苦手で、仇討ちを果たす決意もなかなか固まりません。貧しい長屋で暮らすうちに、個性豊かな住人たちとの交流を深め、次第に復讐とは異なる生き方を考えるようになります。
是枝監督が時代劇に挑戦した異色作。仇討ちを中心とする従来の武士の物語とは異なり、復讐を望まない主人公を通して、命の尊さや人間らしい生き方を描いています。岡田准一の穏やかな演技と、長屋の住人たちによるユーモラスな掛け合いも魅力。時代劇でありながら、是枝作品らしい温かな人間ドラマが展開されます。
6. 歩いても 歩いても(2008年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:阿部寛、夏川結衣、樹木希林、原田芳雄
ある夏の日、横山家の次男・良多は、妻と息子を連れて実家を訪れます。家族が集まるのは、15年前に亡くなった長男の命日。久しぶりの再会を喜びながら食卓を囲む一家でしたが、何気ない会話の中には、長年積み重なってきた不満や後悔、言葉にできない感情が隠されていました。
家族の一日を通して、親子のすれ違いや喪失の悲しみを描いた作品。大きな事件が起こるわけではありませんが、食事の準備や昔話、ささいな口論など、日常の描写から家族の複雑な関係が浮かび上がります。樹木希林の自然で存在感のある演技も見どころ。誰もが経験する家族との距離感を、温かさとほろ苦さを交えて描いた名作です。
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7. 大丈夫であるように Cocco 終らない旅(2008年)

監督:是枝裕和
出演:Cocco
沖縄出身のシンガーソングライター・Coccoの活動と素顔に迫ったドキュメンタリー映画。音楽活動を再開した彼女の全国ツアーに密着し、ステージ上での圧倒的な歌声だけでなく、故郷への思いや環境問題への関心、音楽と向き合う姿を記録していきます。
是枝監督が長年培ってきたドキュメンタリーの手法を生かし、一人のアーティストの内面に迫った作品。華やかなライブ映像だけではなく、日常の中で見せる繊細な表情や言葉を丁寧に捉えています。Coccoの音楽を知る人はもちろん、表現することの苦しさや喜びに関心のある人にもおすすめの一本です。
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8. 空気人形(2009年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:ペ・ドゥナ、ARATA(井浦新)、板尾創路、オダギリジョー
東京の古いアパートで暮らす男性が所有する空気人形が、ある日突然、心を持って動き始めます。人間の世界に興味を抱いた彼女は、街へ出かけ、レンタルビデオ店で働き始めます。そこで出会った青年・純一に恋心を抱きますが、人間ではない自分の存在に戸惑いながら、愛することや生きることの意味を知っていきます。
業田良家の漫画『ゴーダ哲学堂 空気人形』を原作としたファンタジードラマ。主演のペ・ドゥナが、無垢な心で人間社会を見つめる空気人形を繊細に演じています。美しい映像と幻想的な雰囲気の中で、現代社会の孤独や人間関係の希薄さを描いた作品。独特の設定を通して、人間とは何かを問いかける異色の名作です。
9. 奇跡(2011年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:前田航基、前田旺志郎、大塚寧々、オダギリジョー
両親の離婚によって離れ離れに暮らす兄弟、航一と龍之介。兄は鹿児島で母親と、弟は福岡で父親と暮らしていました。ある日、九州新幹線の開通にまつわる噂を耳にした航一は、走る新幹線同士がすれ違う瞬間に願い事をすれば奇跡が起こると信じ、弟や友人たちと計画を立てます。
九州新幹線の全線開業を背景に、子どもたちの冒険と成長を描いた作品。主演を務めたのは、お笑いコンビ「まえだまえだ」の前田航基と前田旺志郎。子どもたちの自然な会話や行動を通して、家族への思いと成長の瞬間が生き生きと描かれています。ユーモアと温かさに満ちた、是枝作品の中でも親しみやすい一本です。
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10. そして父になる(2013年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:福山雅治、尾野真千子、真木よう子、リリー・フランキー
大手建設会社で働くエリート会社員・野々宮良多は、妻と6歳の息子に囲まれ、順調な人生を送っていました。しかし、ある日病院から、息子が出生時に別の家庭の子どもと取り違えられていたことを知らされます。血のつながった子どもを引き取るべきか、それとも6年間育ててきた息子との生活を守るべきか。2組の家族は難しい選択を迫られます。
第66回カンヌ国際映画祭で審査員賞を受賞した家族ドラマ。血縁と育てた時間のどちらが親子の絆を形作るのかという普遍的な問いを、異なる価値観を持つ2つの家庭を通して描いています。福山雅治が演じる不器用な父親と、リリー・フランキーが演じる温かな父親の対比も見どころ。親になることの意味を深く考えさせられる作品です。
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11. 海街diary(2015年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すず
鎌倉の古い家で暮らす幸、佳乃、千佳の3姉妹。ある日、長年疎遠だった父親の訃報が届き、葬儀のために訪れた山形で、異母妹のすずと出会います。身寄りを失ったすずを鎌倉へ迎え入れた3姉妹は、4人で新しい生活を始めることに。季節の移り変わりとともに、姉妹たちは少しずつ家族としての絆を深めていきます。
吉田秋生の人気漫画を映画化した作品。鎌倉の美しい四季や食卓の風景を背景に、4姉妹の何気ない日常を丁寧に描いています。綾瀬はるか、長澤まさみ、夏帆、広瀬すずの自然な演技が魅力で、家族の複雑な過去を抱えながらも前向きに生きる女性たちの姿が印象的。穏やかな時間の流れが心地よいヒューマンドラマです。
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12. いしぶみ(2016年)

監督:是枝裕和
出演:綾瀬はるか、池上彰
1945年8月6日、広島に原子爆弾が投下され、多くの人々が命を落としました。その中には、建物疎開の作業に動員されていた旧制広島二中の1年生たちも含まれていました。本作では、犠牲となった少年たちの遺族が残した証言をもとに、彼らが生きた日常と、突然奪われた未来を描いていきます。
広島テレビが制作したドキュメンタリー番組を基に、是枝監督が映画として再構成した作品。綾瀬はるかによる朗読と池上彰の語りを通して、戦争の悲劇を一人ひとりの人生に寄り添いながら伝えています。大きな歴史的事件を数字や記録だけで捉えるのではなく、そこに確かに存在した人々の記憶を未来へ残そうとする作品です。
13. 海よりもまだ深く(2016年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:阿部寛、真木よう子、小林聡美、樹木希林
かつて文学賞を受賞したものの、現在は売れない作家として暮らす良多。探偵事務所で働きながら生活していますが、競輪への依存もあり、別れた妻への養育費すら満足に支払えません。そんなある日、台風の接近によって、良多は元妻と息子、母親とともに実家で一夜を過ごすことになります。
夢を諦めきれない中年男性と、その家族の関係を描いたヒューマンドラマ。阿部寛が演じる情けなくも憎めない主人公と、樹木希林が演じる母親の掛け合いが印象的です。人生は思い描いた通りには進まないという現実を受け入れながら、それでも日々を生きていく人々の姿を温かな視線で描いています。
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14. 三度目の殺人(2017年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:福山雅治、役所広司、広瀬すず、吉田鋼太郎
殺人の前科がある男・三隅が、勤務先の社長を殺害した容疑で逮捕されます。三隅は犯行を認めていましたが、弁護を担当する重盛は、調査を進めるうちに供述の矛盾に気づき始めます。さらに被害者の娘との関係が浮かび上がり、事件の真相はますます不透明になっていきます。
是枝監督が本格的な法廷サスペンスに挑戦した作品。福山雅治演じる弁護士と、役所広司演じる容疑者の緊迫した対話を中心に、真実とは何か、司法は何を裁くのかという問題を問いかけます。観客に明確な答えを提示するのではなく、複数の可能性を残す物語が特徴。人間の内面に潜む複雑さを描いた重厚なサスペンスです。
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15. 万引き家族(2018年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:リリー・フランキー、安藤サクラ、松岡茉優、樹木希林
東京の片隅にある古い家で暮らす柴田一家。祖母の年金と日雇い仕事、そして万引きによって生計を立てる彼らは、貧しくも笑顔の絶えない生活を送っていました。ある冬の日、父親の治と息子の祥太は、寒空の下で一人きりになっていた少女を家へ連れ帰ります。新たな家族を迎えたことで、一家の生活は少しずつ変化していきます。
第71回カンヌ国際映画祭で最高賞パルム・ドールを受賞した、是枝監督の代表作。血のつながりだけでは定義できない家族の形と、社会から取り残された人々の暮らしを描いています。安藤サクラや樹木希林をはじめとする出演者の演技も高く評価されました。家族とは何か、幸福とは何かを深く問いかける傑作です。
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16. 真実(2019年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:カトリーヌ・ドヌーヴ、ジュリエット・ビノシュ、イーサン・ホーク、リュディヴィーヌ・サニエ
フランスを代表する大女優ファビエンヌが、自伝を出版することになります。その出版を祝うため、アメリカで暮らす娘リュミールが夫と娘を連れて帰国。しかし、母親の自伝には都合の悪い過去が書かれておらず、家族の間に長年積み重なってきた不満や葛藤が表面化していきます。
是枝監督がフランスで製作した初の海外長編映画。カトリーヌ・ドヌーヴとジュリエット・ビノシュというフランス映画界を代表する俳優が母娘を演じています。女優としての成功と母親としての役割、記憶と真実の違いをめぐる会話劇が中心。文化や言語が変わっても、是枝作品に共通する家族の複雑さが丁寧に描かれています。
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17. ベイビー・ブローカー(2022年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、イ・ジウン、ペ・ドゥナ
韓国のある街で、赤ん坊を匿名で預けられる「ベイビー・ボックス」に、一人の母親が子どもを置いていきます。しかし、赤ん坊を連れ去って売ろうとしていた男たちは、翌日戻ってきた母親と遭遇。やがて彼らは、赤ん坊の新しい家族を探すため、奇妙な旅に出ることになります。一方、彼らの行動を追う刑事たちも動き始めていました。
是枝監督が韓国で製作したロードムービー。主演のソン・ガンホは、第75回カンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞しました。血縁や法律だけでは測れない家族のつながりを、ユーモアと温かさを交えて描いています。社会的に弱い立場に置かれた人々が、旅を通して互いを理解していく姿が印象的な作品です。
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18. 怪物(2023年)

監督:是枝裕和
脚本:坂元裕二
出演:安藤サクラ、永山瑛太、黒川想矢、柊木陽太
湖のある郊外の街で、シングルマザーの早織は、小学生の息子・湊の様子がおかしいことに気づきます。学校で教師から不適切な扱いを受けているのではないかと疑った早織は、学校へ説明を求めます。しかし、教師や子どもたちの視点から出来事を見つめ直すうちに、同じ事件がまったく異なる姿を見せ始めます。
『花束みたいな恋をした』などで知られる坂元裕二が脚本を担当し、第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した作品。異なる人物の視点を重ねることで、思い込みや偏見が真実を見えにくくしていく構造が特徴です。子どもたちの繊細な感情を捉えた演出と、坂本龍一による音楽も大きな魅力。観る者の価値観を揺さぶる人間ドラマです。
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19. 箱の中の羊(2026年)

監督・脚本:是枝裕和
出演:綾瀬はるか、大悟(千鳥)、桒木里夢、清野菜名
少し先の未来。建築家の音々と工務店を営む夫の健介は、幼い息子を亡くした悲しみを抱えながら暮らしていました。そんな夫婦が新たに家族として迎え入れたのは、亡き息子の姿をしたヒューマノイド。再び始まった家族の生活は、喜びと戸惑いが入り混じるものとなっていきます。
『万引き家族』以来、約8年ぶりとなる是枝監督の日本映画オリジナル脚本作品。2026年5月29日に公開され、第79回カンヌ国際映画祭コンペティション部門にも正式出品されました。綾瀬はるかと千鳥の大悟が夫婦役を演じ、テクノロジーが進化した社会における家族のあり方を描いています。これまでの是枝作品で繰り返し問いかけられてきた「家族とは何か」というテーマを、近未来の設定から見つめ直した作品です。
20. ルックバック(2026年)

監督・脚本:是枝裕和
原作:藤本タツキ
出演:出口夏希、蒔田彩珠
小学4年生の藤野は、学年新聞に掲載される自分の4コマ漫画に自信を持っていました。しかし、不登校の同級生・京本が描いた漫画を目にしたことで、自分との画力の差に衝撃を受けます。漫画を描くことに向き合い続ける2人は、やがて創作を通じて特別な関係を築いていきます。
『チェンソーマン』などで知られる藤本タツキの同名漫画を、是枝監督が実写映画化した作品。藤野役を出口夏希、京本役を蒔田彩珠が演じています。漫画を描く喜びや苦しみ、創作への情熱、そして人との出会いが人生にもたらす影響を描いた物語です。是枝監督が得意とする繊細な人物描写と、原作が持つ強い感情表現が融合した作品となっています。
是枝裕和監督作品に共通する魅力とは?
是枝裕和監督の映画に共通するのは、家族や人間関係を理想化せず、その複雑さをありのままに描いていることです。
『そして父になる』では血縁と親子の絆、『海街diary』では異なる過去を持つ姉妹のつながり、『万引き家族』では社会の常識から外れた家族のあり方を描いています。登場人物たちは必ずしも正しい選択をするわけではありませんが、その弱さや矛盾も含めて、一人ひとりの人生が丁寧に描かれています。
また、日常の何気ない瞬間を通して人物の感情を表現する演出も特徴です。食卓を囲む時間、家族との会話、季節の移り変わりといった身近な風景が、物語の中で重要な意味を持っています。大きな事件や劇的な展開に頼らず、静かな時間の積み重ねによって観客の心を動かすのが、是枝作品ならではの魅力です。
さらに、『誰も知らない』や『万引き家族』では社会から見過ごされる人々に目を向け、『三度目の殺人』『怪物』では真実の曖昧さを問いかけるなど、作品ごとに異なるテーマにも挑戦しています。近年は海外での映画製作や、近未来を舞台にした物語、人気漫画の実写化など、その表現の幅をさらに広げています。
初めて是枝作品を観るなら、家族ドラマの代表作『そして父になる』『海街diary』、国際的に高く評価された『万引き家族』がおすすめです。
一方、監督としての原点を知りたいなら『幻の光』『ワンダフルライフ』、複雑な物語構成を楽しみたいなら『三度目の殺人』『怪物』も外せません。
30年以上にわたり、人間の生と死、家族の絆、社会との関係を描き続けてきた是枝裕和。その作品を公開順にたどることで、日本映画を代表する監督が追い求めてきたテーマと、表現の変化を感じられるはずです。
(文:Indiebase編集部)
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