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今日紹介するのは、フランスの画家ポール・ドラローシュが1833年に描いた「レディ・ジェーン・グレイの処刑」。目隠しをされた白いドレスの少女が、処刑台に手を伸ばして探っています。まだ台の場所すらつかめていない、まさにその瞬間です。
9日間だけの女王
描かれているレディ・ジェーン・グレイは実在の人物です。ヘンリー8世の血を引く彼女は、周囲の政治的思惑によって16歳でイングランド女王に即位させられます。ところが在位はわずか9日間。すぐに廃位され、翌年、若くして処刑されました。ドラローシュはこの処刑の直前、目隠しをされたジェーンが処刑台の位置を手探りで確認する一瞬を選んで描いています。史実としてはこの処刑は屋外で行われたとされますが、ドラローシュは薄暗い石造りの室内という舞台を作り、絵のドラマ性を優先しています。

パリで熱狂、批評家は冷ややか
1834年のパリ・サロンで発表されると、この絵は大きな話題になりました。実物大に近いサイズと緻密な描写に人々は押し寄せ、フランスの観客はマリー・アントワネットの処刑と重ね合わせて見ていたとも言われています。一方で批評家の反応は厳しく、演劇じみた大げさな演出だと批判する声も少なくありませんでした。それでもこの絵は、当時の歴史画としては破格の人気を獲得します。
テムズ川の洪水で、行方不明に
その後この絵はイギリスに渡り、1902年にナショナル・ギャラリーへ寄贈されます。ところが20世紀に入ると、こうした劇的な歴史画は急速に評判を落としていきました。1928年、テムズ川の氾濫でギャラリーが浸水した際、この絵も被害を受けたとされ、以降は失われたものとして扱われるようになります。
45年後、倉庫の奥から見つかった
実際にはこの絵、破棄されていたわけではありませんでした。1973年、テート・ギャラリーの学芸員が別の作品を探していた際、丸めて保管されていたこの絵を偶然発見します。修復を経て1975年に再び展示されると、忘れられていたはずのこの絵は瞬く間に人気作へと返り咲きました。特に若い来館者の心をつかんでいるようで、今もナショナル・ギャラリーで最も人だかりのできる絵の一つになっています。
(文:Indiebase編集部)
