Indiebase編集部です。
夜空に向かってそびえ立つ、巨大な一本の糸杉。その左右には星と月が輝き、青い空が渦を巻くように広がっています。
手前には曲がりくねった道が続き、二人の人物が歩いています。奥には馬車が走り、黄色く染まった麦畑が広がっています。
オランダの画家フィンセント・ファン・ゴッホが描いた『糸杉と星の見える道』(1890年、クレラー=ミュラー美術館所蔵)は、亡くなるわずか数か月前に制作された作品です。
静かな田園風景でありながら、空も大地も激しくうねり、どこか現実離れした雰囲気を漂わせています。
精神療養中に描かれた最後の風景
1889年5月、ゴッホは精神的な不調のため、南フランスのサン=レミにある療養院へ入院しました。
療養中も絵を描き続け、糸杉やオリーブ畑、麦畑など、周囲の自然を繰り返し題材にしています。
『糸杉と星の見える道』が描かれたのは、1890年5月頃。ゴッホが療養院を退院する直前でした。
同年7月、ゴッホは37歳で亡くなります。
この作品は、彼が南フランスで描いた最後期の風景画の一つとなりました。
夜空を二分する巨大な糸杉

この作品で最も目を引くのは、中央にそびえ立つ黒々とした糸杉です。
糸杉は地中海沿岸でよく見られる樹木で、ヨーロッパでは墓地に植えられることも多く、死や永遠を連想させる存在でもあります。
ゴッホは糸杉の形に強く魅了され、弟テオへの手紙でも、その美しさについて繰り返し語っています。
この絵では、糸杉が夜空を左右に分け、左側に星、右側に細い月が描かれています。
空には円を描くような筆遣いが重なり、星や月の光が周囲に広がっています。
同じくサン=レミで制作された『星月夜』にも、巨大な糸杉と渦巻く夜空が登場します。

ゴッホが描いた人生最後の春
ゴッホは1890年5月、療養院を退院してパリを経由し、オーヴェル=シュル=オワーズへ移りました。
そこで再び精力的に制作を続けますが、約2か月後に亡くなりました。
『糸杉と星の見える道』は、南フランスを離れる直前に描かれた作品です。
中央の糸杉は天に向かって伸び、左右には星と月が輝いています。その下では、二人の人物が道を歩き、馬車が通り過ぎています。
渦巻く夜空と巨大な糸杉の下に、人々の何気ない日常が描き込まれているのです。
(文:Indiebase編集部)
