CULTURE

グイド・レーニ「聖セバスティアヌス」とは?三島由紀夫を魅了した、矢に射抜かれる美青年

Indiebase編集部です。

両腕を頭上で縛られ、一本の木にくくりつけられた美しい青年。その胸には矢が突き刺さり、傷口から血が流れています。

しかし、青年は苦痛に顔をゆがめることなく、天を見上げています。柔らかな光に照らされた肉体と、静かな表情が印象的です。

イタリアの画家グイド・レーニが描いた『聖セバスティアヌス』(1615年頃、ジェノヴァ・パラッツォ・ロッソ所蔵)は、キリスト教の殉教者を描いたバロック絵画の代表作です。

この作品は、日本の作家・三島由紀夫にも強烈な影響を与えました。

矢で射抜かれた美しい殉教者

聖セバスティアヌスは、3世紀末のローマ帝国で生きたと伝えられるキリスト教の聖人です。

伝説によれば、皇帝ディオクレティアヌスに仕える兵士でしたが、密かにキリスト教を信仰していました。

その信仰が発覚すると、皇帝の命令によって木に縛りつけられ、兵士たちから矢を射かけられます。

しかし、セバスティアヌスは奇跡的に生き延びました。その後、再び皇帝を非難したことで捕らえられ、最終的に殴打されて命を落としたと伝えられています。

レーニは、矢を受けた青年の姿を、苦痛に満ちた処刑場面ではなく、静かで美しい宗教画として描きました。

三島由紀夫の『仮面の告白』との関係

この絵画に深く魅了された日本人作家が、三島由紀夫です。

1949年に発表された小説『仮面の告白』には、少年時代の主人公が画集でレーニの『聖セバスティアヌス』を目にし、強烈な性的興奮を覚える場面が登場します。

木に縛られ、矢を受けた美しい青年の姿は、主人公が自身の欲望に気づく重要なきっかけとなりました。

三島自身も後年、聖セバスティアヌスの姿を再現した写真作品のモデルとなっています。

篠山紀信が撮影したその写真では、三島が裸の上半身に矢を受け、レーニの絵画を思わせる姿勢を取っています。

苦痛と美しさが共存する絵画

レーニは、理想化された人体表現と、柔らかな光による宗教的な美しさを得意とした画家です。

『聖セバスティアヌス』でも、暗い背景から青年の白い肌が浮かび上がり、天を仰ぐ顔には苦痛よりも恍惚とした表情が感じられます。

傷つけられた肉体を、美しいものとして描く。その独特の表現は、三島由紀夫が追求した肉体美や死のイメージとも深く結びつきました。

青年の脇腹を貫く矢と、天を見上げる静かな眼差し。レーニは、暴力によって傷つけられた肉体を、宗教的な美しさへと変えています。

(文:Indiebase編集部)


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