Indiebase編集部です。
『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』『風ノ旅ビト』『INSIDE』『Gorogoa』『Baba Is You』『Inscryption』――。
大ヒットしたゲームではなく、「これまでにない遊び」を生み出したゲームを、ゲームクリエイター自身が選ぶ。そんな少し変わった賞が「ゲームデザイナーズ大賞」です。
2010年に始まった同賞は、2026年をもって終了。最後のゲームデザイナーズ大賞には、台湾のTeam9が開発した『文字遊戯』が選ばれました。
今回は、ゲームデザイナーズ大賞とはどんな賞だったのか。そして16年間にわたってどんなゲームが評価されてきたのか、2010年の第1回から2026年の最終回まで振り返ります。
ゲームデザイナーズ大賞とは?
ゲームデザイナーズ大賞は、「日本ゲーム大賞」の年間作品部門に2010年から設けられた賞です。
最大の特徴は、一般投票をもとに選考される通常の年間作品部門とは異なり、現役のゲームクリエイターが「独創性」と「斬新性」を重視して作品を選ぶこと。
「日本ゲーム大賞選考委員会」とは別にクリエイターによる審査会が設けられ、各審査員が持ち点10点で作品を評価。その集計結果をもとに選出し、最終的に日本ゲーム大賞選考委員会の承認を経て受賞作品が決定されてきました。
初代から審査員長を務めたのが、『星のカービィ』『大乱闘スマッシュブラザーズ』などで知られるゲームクリエイターの桜井政博氏です。

第2回となる2011年の公式資料では、この賞について「作り手の視点」から高い独創性を持つ革新的な作品を選ぶ賞だと説明されています。
つまり、必ずしも「その年で一番売れたゲーム」を選ぶ賞ではありません。
むしろ、
「こんなゲーム、今までなかった」
という作品をゲームを作る側の人間が発見し、評価するための賞だったと言えます。
実際、2012年の授賞式で桜井氏は、前年の『ヒラメキパズル マックスウェルの不思議なノート』について、一般投票ではわずか4票だった作品がクリエイターの投票では大賞になったことを紹介しています。
ここにゲームデザイナーズ大賞の面白さがよく表れています。
ゲームデザイナーズ大賞 歴代受賞作品
2010年『HEAVY RAIN -心の軋むとき-』

開発:Quantic Dream
記念すべき最初の受賞作品。
連続誘拐事件を巡る物語を、プレイヤー自身の選択と操作によって進めていくアドベンチャーゲームです。
単に物語を「見る」のではなく、自分の行動によって物語そのものが変化していく構成などが評価され、ゲームデザイナーズ大賞の初代受賞作となりました。
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2011年『ヒラメキパズル マックスウェルの不思議なノート』

開発:5TH Cell
ノートに単語を書くと、その言葉に対応する物体がゲーム世界に出現するというパズルゲーム。
同じ問題でも「何を呼び出すか」によって解決方法が変わるため、プレイヤーの発想そのものが攻略法になります。
一般投票ではほとんど票を得ていなかったにもかかわらず、クリエイターから高く評価された、ゲームデザイナーズ大賞を象徴する一作です。
2012年『風ノ旅ビト』

開発:thatgamecompany
広大な砂漠を、一人の旅人として進んでいくアドベンチャーゲーム。
目的を説明する大量のテキストや会話を排し、映像、音楽、移動、そして偶然出会った他のプレイヤーとの交流によって体験そのものを作り上げました。
「何を追加するか」ではなく「何を削るか」というゲームデザインも高く評価されています。
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2013年『The Unfinished Swan』

真っ白で何も見えない世界へ黒い絵の具を投げることで、周囲の地形を浮かび上がらせながら進んでいく作品。
「見えない世界を自分で可視化する」というアイデアをゲームそのものへ落とし込んだ独創的なタイトルで、2013年のゲームデザイナーズ大賞を受賞しました。
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2014年『ブラザーズ 2人の息子の物語』

開発:Starbreeze Studios
兄と弟、二人のキャラクターを一本のコントローラーで同時に操作するアドベンチャーゲーム。
操作方法そのものが兄弟の関係性や物語と結びついているのが特徴で、ゲームだからこそ可能な感情表現を見せた作品として評価されました。
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2015年『Ingress』

開発:Niantic
現実世界の位置情報を利用し、実在するランドマークなどを巡って陣取りを行う位置情報ゲーム。
スマートフォンを持って現実の街そのものを歩くという遊びを大規模に展開し、その後の位置情報ゲームにも大きな可能性を示しました。
2016年『Life Is Strange』

開発:DONTNOD Entertainment
時間を巻き戻す能力を持つ少女マックスを主人公としたアドベンチャーゲーム。
過去へ戻って選択をやり直せる一方、その選択が思いもよらない結果へつながっていく。物語とゲームシステムを結びつけた作品として、ゲームデザイナーズ大賞に選ばれました。
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2017年『INSIDE』

開発:Playdead
巨大な施設のような世界を少年が進んでいく、ダークなアクションアドベンチャー。
ほとんど説明を行わず、背景やギミック、アニメーションによって世界の異様さをプレイヤーに理解させていく作品です。
『LIMBO』を生み出したPlaydeadによる、環境そのものを使った物語表現が光る一作です。
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2018年『Gorogoa』

開発:Jason Roberts
複数のイラストを移動させたり、重ねたり、拡大したりすることで謎を解いていくパズルゲーム。
一枚の絵だったものが別の空間へつながっていくような、絵本とパズルの境界を越えた作品です。
公式の選考理由でも「独創性を最重要視して決める賞」と説明され、『Gorogoa』の他に例のないゲームデザインが高く評価されています。
▶ Steamストアページ
2019年『ASTRO BOT:RESCUE MISSION』

開発:JAPAN Studio / Team ASOBI
VR空間を活用したアクションゲーム。
プレイヤー自身が頭を動かしてステージを覗き込むなど、従来の3Dアクションとは異なる「VRだから成立する遊び」を積極的に取り入れた作品です。
後に世界的な人気シリーズへ成長するASTRO BOTの重要な一作でもあります。
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2020年『Baba Is You』

開発:Hempuli
ゲーム世界に存在する「ルールそのもの」を書き換えて攻略するパズルゲーム。
「WALL IS STOP」のように並んだ単語を動かすことで、壁を通過可能にしたり、操作するキャラクターそのものを変更したりできます。
ゲームのルールは絶対という常識を、プレイヤー自身に壊させる発想が評価されました。
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2021年『マリオカート ライブ ホームサーキット』

開発・発売:任天堂
カメラを搭載した実物のカートとNintendo Switchを組み合わせ、自宅の床を『マリオカート』のコースへ変えてしまう作品。
ラジコンとAR、テレビゲームを融合させ、「現実世界そのものをゲームフィールドにする」遊びを実現した点が評価されました。
▶ Nintendo Storeページ
2022年『Inscryption』

開発:Daniel Mullins Games
カードゲームとして始まりながら、その枠組みそのものが次々と崩れていく異色作。
デッキ構築型カードゲーム、脱出ゲーム、ホラー、メタフィクションなど複数の要素が絡み合い、ゲームの正体を知ること自体が体験になっています。
公式の選考理由でも、その異質さゆえに特徴を説明することすら難しい作品として紹介されました。
▶ Steamストアページ
2023年『RPGタイム!~ライトの伝説~』

開発:デスクワークス
少年がノートに描いた手作りRPGを遊ぶという設定のアドベンチャーゲーム。
鉛筆画、紙工作、消しゴム、付箋など、学校の机の上に広がる「子どもが作ったゲーム」を徹底的に作り込んでいます。
公式では、膨大な数のゲームが登場する時代にあっても「格別の個性」を持つ点が評価されています。
▶ Steamストアページ
2024年『Viewfinder』

開発:Sad Owl Studios
写真をゲーム世界へ配置すると、その平面の写真がそのまま立体空間になるパズルゲーム。
写真の中にしか存在しなかった橋を現実の足場にするなど、「2Dと3Dの境界」を利用して謎を解いていきます。
公式でも、トリックアートの中を実際に歩くような唯一無二のアイデアが評価されています。
▶ Steamストアページ
2025年『INDIKA』

開発:Odd Meter
19世紀末のロシアを思わせる世界を舞台に、修道女インディカの奇妙な旅を描くアドベンチャー。
ゲームシステムそのものの斬新さではなく、心象風景や宗教、徳をめぐる物語、独特の世界設定や雰囲気など、作品全体が生み出す唯一無二の体験が評価されました。
▶ Steamストアページ
2026年『文字遊戯』

開発:Team9
そして最後のゲームデザイナーズ大賞となったのが、台湾のTeam9による『文字遊戯』です。
登場人物から背景まで、世界のほぼすべてを「文字」で構成したRPG。文章は単なる説明ではなくゲーム世界そのものであり、文字を書き換えたり動かしたりすることが攻略につながります。
2010年に「ゲームだからできる物語表現」を見せた『HEAVY RAIN』から始まり、最後に「文字そのものをゲーム世界にする」作品が選ばれたのも、この賞らしい幕引きと言えるでしょう。
▶ Steamストアページ
なぜゲームデザイナーズ大賞は終了したのか?
CESAは当初、2026年を最後にゲームデザイナーズ大賞が「その役割を終える」と発表していました。
そして9月15日の最後の授賞式で、審査員長を務めてきた桜井政博氏自身が終了の理由について説明しています。
理由は意外なほどシンプルでした。
桜井氏の役割を引き継ぐ後任が見つからなかったことです。
桜井氏は最後の授賞式で、終了の理由について「私の代わりがいなかった」と説明しています。
独創性を評価する賞だからこそ、審査する側にも斬新なゲームを生み出した実績が求められる。そうしたクリエイターを集めて作品を評価し、授賞式で受賞作を紹介するところまで担える人物を数年にわたって探したものの、後任を見つけることができなかったと明かしました。
なお、日本ゲーム大賞そのものが終了するわけではありません。
2024年からは、独創的なアイデアや挑戦によって、これまでにない新たなジャンルやゲーム性を生み出した作品を表彰する「ブレイクスルー賞」も設けられています。ゲームデザイナーズ大賞とは審査方法が異なりますが、独創的なゲームを評価する賞は別の形で存在しています。
「売れたゲーム」とは違うゲーム史
歴代作品を並べてみると、この賞の面白さがよく分かります。
『HEAVY RAIN』『風ノ旅ビト』『Ingress』『INSIDE』『Gorogoa』『Baba Is You』『Inscryption』『Viewfinder』。
ジャンルも規模もバラバラです。
共通しているのは、既存のゲームを豪華にしただけではなく、「ゲームって、こんなこともできるんだ」と思わせる何かを持っていたことでしょう。
売上本数だけでは残りにくいゲームの革新を記録してきたゲームデザイナーズ大賞。その歴代受賞作を振り返ることは、2010年代以降のゲームデザインがどのように広がってきたのかを振り返ることでもあります。
2026年で賞の歴史には幕が下りましたが、ここで評価された「新しい遊びを作る」という精神は、これからのゲームにも受け継がれていくはずです。
日本ゲーム大賞 公式サイト:
https://awards.cesa.or.jp/
