Indiebase編集部です。
CD(コンパクトディスク)の直径は12cm。誕生当初の標準的な収録時間は約74分でした。
実は、この「74分」という数字には、ベートーヴェンの交響曲第9番『合唱付き』が関係しているという有名な逸話があります。
その中心にいるのが、20世紀を代表する指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラーです。
1951年に行われた彼の歴史的な演奏が、CDの規格に影響を与えたと語られているのです。
なぜCDの収録時間は74分になったのか?
1970年代後半、ソニーとオランダのフィリップスは、新しい音楽メディアであるCDの共同開発を進めていました。
当初、フィリップス側は直径11.5cm、収録時間約60分という案を検討していました。
しかし、ソニー側には、クラシック音楽の大作を途中で切らずに一枚のディスクに収めたいという考えがありました。
その代表例として挙げられたのが、ベートーヴェンの交響曲第9番です。
当時ソニーの副社長だった大賀典雄は、オペラや交響曲を途中で中断せずに聴けることを重視していました。
最終的にCDの直径は12cmとなり、約74分の音楽を収録できる規格が成立します。
そして1982年、世界初の商業用CDプレーヤーと音楽CDが日本で発売されました。
フルトヴェングラーの「バイロイトの第九」とは?
CDの収録時間をめぐる逸話で、特に有名なのが1951年7月29日の演奏です。
この日、ドイツのバイロイト祝祭劇場では、第二次世界大戦後初めて再開されたバイロイト音楽祭の開幕公演が行われました。
指揮台に立ったのは、ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(1886〜1954年)。
バイロイト祝祭管弦楽団と合唱団を率いて、ベートーヴェンの交響曲第9番を演奏しました。
この演奏は、現在も「バイロイトの第九」と呼ばれる歴史的な名演として知られています。
演奏時間は約74分。
激しい緊張感、大胆に変化するテンポ、そして第4楽章の圧倒的なクライマックスによって、20世紀のクラシック録音を代表する一枚となりました。
この演奏を途中で切らずに収めるため、CDの収録時間が約74分に設定されたという話が広まったのです。
本当に「バイロイトの第九」がCDの規格を決めたのか?
ただし、この逸話には議論があります。
CDの開発に携わった技術者ケース・スホーハマー・イミンクは、CDの直径や収録時間の決定には、技術的・商業的な事情も大きく関わっていたと指摘しています。
つまり、フルトヴェングラーの演奏時間だけでCDの規格が決まったと断定することはできません。
一方、ソニーの公式な社史でも、ベートーヴェンの「第九」を一枚に収めるという考えが、CDの仕様をめぐる議論に影響したことが紹介されています。
音楽を記録する新しい技術が、クラシック音楽の名作を基準の一つとして開発された。
それは、音楽史と技術史が交差する興味深いエピソードです。
70年以上経った今も聴かれる「バイロイトの第九」
1951年のバイロイト公演は、現在もクラシック音楽史に残る名演として聴き継がれています。
録音はモノラルで、現代のデジタル録音と比べれば音質には時代を感じます。
しかし、フルトヴェングラーの大胆なテンポの変化や、音楽全体を大きくうねらせるような指揮には、録音の古さを超えた迫力があります。
特に第4楽章の終盤、合唱とオーケストラが一体となって突き進む場面は圧巻です。
CDの規格に影響を与えたと語られる歴史的な演奏を、今も一枚のCDで楽しむことができます。

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(文:Indiebase編集部)
