Indiebase編集部です。
黒いマントをまとった男女が、身を寄せ合うように歩いています。
その周囲には、巨大な蝶の羽を持つ青い大蛇が何匹も絡み合い、鋭い牙をむき出しにしています。
さらに、二人の足元からは白髪の老婆が顔をのぞかせ、不気味な笑みを浮かべています。
ポーランドの画家エドワルト・オクンが描いた『戦争と私たち』(1917〜1923年、ワルシャワ国立美術館所蔵)は、第一次世界大戦の時代に制作された象徴主義の作品です。
美しい装飾と恐ろしい怪物が入り混じる、奇妙な光景が広がっています。
怪物に囲まれた男女の正体
中央に描かれているのは、画家オクン自身と妻のゾフィアとされています。
男性は黒いマントで女性を包み込むように寄り添い、二人は周囲の怪物から身を守るように立っています。
背後には、鮮やかな青色の大蛇が何匹も絡み合っています。
蛇たちは大きく口を開け、今にも二人に襲いかかりそうです。
しかし、その体には美しい蝶の羽が生えており、恐ろしさと華やかさが奇妙に共存しています。
この怪物たちは、戦争によって人々の生活を脅かす暴力や混乱を象徴する存在として解釈されています。
足元から忍び寄る不気味な老婆

二人の足元には、白髪の老婆が隠れるように描かれています。
老婆は鋭い目つきでこちらを見つめ、片手を男性のマントに伸ばしています。
その姿は、死や不幸が人間のすぐそばに潜んでいることを連想させます。
一方、女性は白い花を手にしています。
周囲の怪物とは対照的なこの花は、純粋さや希望を象徴するものとも考えられます。
恐ろしい存在に囲まれながらも、二人は互いに寄り添い、離れようとはしていません。
第一次世界大戦が生んだ幻想絵画
1914年に始まった第一次世界大戦は、ヨーロッパ全土に甚大な被害をもたらしました。
当時、ポーランドは独立国家ではなく、その領土はロシア、ドイツ、オーストリア=ハンガリーによって分割されていました。
戦争によってポーランドの土地も戦場となり、多くの人々が犠牲になりました。
オクンは、こうした時代の不安を、現実の戦場ではなく幻想的な怪物によって表現しました。
鮮やかな青い蛇と黄金色の蝶の羽。その中央で、黒いマントに身を包んだ男女が寄り添っています。
怪物たちが牙をむく中、二人は互いの存在を頼りに立ち続けています。
(文:Indiebase編集部)
