Indiebase編集部です。
雨に濡れたニューヨークの大通り。
空を覆うように無数の星条旗が掲げられ、その下を傘をさした人々が歩いています。
アメリカの画家チャイルド・ハッサムが描いた『雨の大通り』(原題:The Avenue in the Rain、1917年、ホワイトハウス・コレクション所蔵)。
美しい雨の日の風景ですが、描かれたのはアメリカが戦争へ向かおうとしていた時代でした。
13万人以上が行進した大通り
1916年5月、ニューヨークの五番街で大規模なパレードが開催されました。
第一次世界大戦が続くなか、アメリカの軍備強化を訴える「戦備促進パレード」です。
参加者は13万人以上。五番街には無数の星条旗が掲げられました。
この光景を目にしたハッサムは、後に旗の美しさに感動したことが、連作を描くきっかけになったと語っています。
彼は1916年から1919年にかけて、旗で飾られた街並みを約30点描きました。
『雨の大通り』も、その一枚です。
アメリカ参戦のわずか2か月前

この絵が完成したのは、1917年2月。
当時、アメリカはまだ第一次世界大戦に参戦していませんでした。
しかし、ドイツが無制限潜水艦作戦の再開を宣言し、アメリカとドイツの関係は急速に悪化していました。
そして1917年4月6日、アメリカはドイツに宣戦布告します。
つまり、この絵は参戦のわずか約2か月前に描かれていたのです。
画面いっぱいに広がる星条旗は、単なる街の飾りではありません。
そこには、戦争を目前にしたアメリカ社会の高まる愛国心が映し出されています。
現在はホワイトハウスに飾られる名画
ハッサムは、雨に濡れた街を青や白の細かな筆遣いで描き、星条旗の赤を鮮やかに浮かび上がらせました。
旗は画面の外から突き出すように配置され、絵そのものが巨大な星条旗のようにも見えます。
この作品は1963年、ホワイトハウスに寄贈されました。
その後、大統領執務室などにも飾られ、アメリカを象徴する絵画のひとつとして知られるようになります。

雨のニューヨークを描いた、美しい一枚。
しかし、その星条旗の向こうには、第一次世界大戦への参戦を目前にしたアメリカの歴史が隠されているのです。
(文:Indiebase編集部)
