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95〜98%が失われたとされる戦前の日本映画。溝口健二『瀧の白糸』と衣笠貞之助『狂った一頁』のデジタル復元版が完成、10月31日に東京国際映画祭で上映

戦前の日本映画のデジタル復元版が、2作品そろって完成した。溝口健二監督の『瀧の白糸』(1933年)と、衣笠貞之助監督の『狂った一頁』(1926年)で、国立映画アーカイブ(NFAJ)が、柳井イニシアティブから受託した「歴史的日本映画のオリジナル白黒フィルムの特性に基づいた映画復元事業」の第1弾にあたる。イタリアのポルデノーネ無声映画祭で、10月7日と8日にプレミア上映されたのを皮切りに、海外への貸し出しと、国内での上映が始まった。

『瀧の白糸』は、10月31日に、東京国際映画祭との共催上映がある(当日券のみ、若干数あり)。その後、2027年1月以降に、NFAJでも『狂った一頁』とあわせて上映される予定だ。

この事業の出発点は、柳井イニシアティブのディレクターで、UCLAと早稲田大学の教授を務めるマイケル・エメリックさん(専門は日本文学)の構想にある。戦前の日本映画は、95%から98%が消失したとされる。エメリックさんは、この危機的な状況に正面から取り組み、残っている日本映画のデジタル化や修復、フィルムへの複製保存を進めるプロジェクトを考えた。2025年7月に相談を受けたNFAJは、協力を快諾。関係団体との調整を進めながら、第1弾として、一年間で実現できる、所蔵する2作品のデジタル復元を行うことになった。2026年2月に契約を結び、IMAGICAエンタテインメントメディアサービスで復元作業が始まった。10月のポルデノーネ無声映画祭では、「The Art of the Benshi」プログラムで上映され、大成功を収めたという。

復元の内容は、作品ごとに異なる。

『瀧の白糸』

複数の16mmプリントをもとに、1999年に作られた35mmの白黒インターネガを、4Kでスキャンした。そこから、2K解像度での画像修復、グレーディング、音声のノイズ除去を行い、映写速度も、より自然な20fpsに修正した。成果物として、デジタルソースマスターと、2K・DCPが作られた。

『瀧の白糸』復元前

『瀧の白糸』デジタル復元後

『狂った一頁』

NFAJが所蔵する3本のフィルムを使った。オリジナルネガから作られた可燃性の初号プリント(①)、①から作られた白黒インターネガの1971年版(②)、同じく2002年版(③)だ。この4Kスキャンデータのうち、①のデータを最大限に生かして、画像修復とグレーディングを行った。①のエッジに残っていた、ごく淡い青の染色と同じ色も再現している。デジタルソースマスターと、4K・DCPに加え、35mmプリント(青染色)も作られた

柳井イニシアティブは、柳井正さん(ファーストリテイリング代表取締役会長兼社長)の寄付により、2014年に発足した、UCLAと早稲田大学の共同連携事業。日本文化研究のグローバル化と、伝承、伝播を目的にしていて、学術シンポジウムのほか、日本の伝統文化を伝えるイベント、研究データのリポジトリとなるWebサイトの構築、「The Art of the Benshi」ワールドツアーなどを展開している。

『狂った一頁』[デジタル復元・染色版]

■復元作品
『瀧の白糸』(1933年)
監督:溝口健二
製作:入江ぷろだくしょん

『狂った一頁』(1926年)
監督:衣笠貞之助
製作:新感覚派映画聯盟

■上映予定
・『瀧の白糸』:2026年10月31日、東京国際映画祭との共催上映(当日券のみ、若干数あり)
・2027年1月以降:国立映画アーカイブで、『瀧の白糸』と『狂った一頁』をあわせて上映予定

■復元事業
主体:柳井イニシアティブ(UCLA・早稲田大学)×国立映画アーカイブ
復元作業:IMAGICAエンタテインメントメディアサービス

画像提供:国立映画アーカイブ

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