Indiebase編集部です。
青いマントをまとった聖母マリアが、幼いイエス・キリストを優しく抱いています。
母親を見上げる幼子と、穏やかに視線を落とすマリア。美しい親子の姿ですが、その頭上には奇妙なものが浮かんでいます。
真っ赤な顔をした、翼の生えた赤ん坊の頭です。

イタリアの画家ジョヴァンニ・ベッリーニが描いた『赤い智天使の聖母』(1485年頃、ヴェネツィア・アカデミア美術館所蔵)は、ルネサンス期の宗教画です。
なぜ聖母子の頭上に、このような不思議な天使たちが描かれているのでしょうか。
赤い顔をした天使たちの正体
頭上に浮かぶ赤い存在は、「智天使(ケルビム)」と呼ばれる天使たちです。
キリスト教の伝統的な天使の階級では、智天使は神に近い高位の存在とされています。
聖書では、ケルビムはエデンの園を守る存在や、神の玉座に関係する超自然的な存在として登場します。
しかし、ルネサンス期の美術では、翼を持つ幼い子どもの顔として表現されることもありました。
この作品でも、赤い智天使たちが雲間から聖母子を見守っています。
なぜ天使たちは真っ赤なのか?
西洋の宗教美術では、天使の色彩に象徴的な意味が与えられることがあります。
赤は神への燃えるような愛や情熱を連想させる色です。
この作品の赤い智天使たちも、神への強い愛を象徴する存在として解釈されています。
現在では天使といえば白い翼を持つ美しい人物を思い浮かべますが、キリスト教美術にはさまざまな姿の天使が登場します。
赤い顔と小さな翼だけで描かれた天使たちは、その独特な表現の一例です。

穏やかな聖母子と幻想的な空
ジョヴァンニ・ベッリーニは、15世紀ヴェネツィア派を代表する画家です。
柔らかな光と豊かな色彩を用いた聖母子像を数多く制作し、後のヴェネツィア絵画にも大きな影響を与えました。
この作品でも、マリアと幼子の肌は繊細に描かれ、背後には川や建物のある風景が広がっています。
一方、青い空には鮮やかな赤い智天使たちが並び、穏やかな親子の姿と強い対比を生んでいます。
幼いキリストを抱くマリアと、雲の上から二人を見守る赤い天使たち。ベッリーニは、現実的な親子の愛情と神聖な世界を、一枚の絵の中に描きました。
(文:Indiebase編集部)
