ART

ウィリアム・ブレイク「ニュートン」とは?科学を批判した名画が200年後に“科学の象徴”になった理由

Indiebase編集部です。

今日紹介するのは、詩人であり画家でもあったウィリアム・ブレイクが1795年に制作した「ニュートン」。海底のような岩場にうずくまり、コンパスで幾何学模様を描く裸体の男性が描かれています。モデルは万有引力の法則で知られる科学者アイザック・ニュートンです。

称賛ではなく、批判のための絵

一見、科学者への敬意を込めた肖像画のようにも見えますが、実際は逆でした。ブレイクは啓蒙思想やニュートン的な合理主義に強い反感を持っており、ニュートンを哲学者フランシス・ベーコン、ジョン・ロックと並べて自身が敵視する存在として扱っていたことで知られています。ブレイクは別の作品への書き込みで「芸術は生命の木、科学は死の木である」とまで言い切っています。

絵の中でニュートンが手にするコンパスは、ブレイクの神話に登場する「ユリズン」という支配的な神格が世界を測る際に使う道具と同じ形をしています。周囲には藻に覆われた岩や生命の気配がありますが、ニュートンはそれには目もくれず、ひたすら図形の作成に没頭しています。自然の豊かさに背を向け、世界を数式に還元しようとする人間の姿。ブレイクにとってこれは皮肉以外の何物でもありませんでした。

生前はほとんど評価されなかった

ブレイク自身、生きている間はほぼ無名で、奇矯な人物として扱われることも多かったといいます。「ニュートン」を含む一連の大型カラープリント作品も、当時はさほど注目されず、再評価が進んだのは20世紀に入ってからでした。現在この作品はロンドンのテート・ブリテンが所蔵しています。

皮肉が、200年後に称賛の像になった

面白いのはここからです。1995年、彫刻家エドゥアルド・パオロッツィはこの絵を元にしたブロンズ像「ニュートン」を制作しました。高さ約3.7メートル、重さ6トンのこの像は大英図書館の中庭に設置され、今もロンドンの撮影スポットの一つになっています。パオロッツィは、ブレイクの痛烈な皮肉画をベースにしながらも、これを芸術と科学、両分野の天才が重なり合う象徴として肯定的に捉え直したと語っています。ニュートンを批判するために描かれた絵が、200年の時を経て、科学と理性を称える巨大な像の原型になったわけです。

(文:Indiebase編集部)

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