Indiebase編集部です。
表現のジャンルを自在に横断し、社会的な課題や環境問題に鋭く切り込み続けるアメリカの現代美術家、メル・チン(Mel Chin)。
その類まれなる功績を称え、第12回「ヒロシマ賞」を受賞した彼の、日本初となる待望の個展「第12回ヒロシマ賞受賞記念 メル・チン展」が、2026年7月25日(土)より広島市現代美術館(広島市南区)にて開幕します。
彫刻、絵画、アニメーション、さらには「ビデオゲーム」や科学的アプローチを取り入れたプロジェクトまで、既存のカテゴリーに囚われないインディー精神あふれる彼の活動の軌跡と、ヒロシマのために制作された最新作が一堂に会する注目の展覧会です。
メル・チン(Mel Chin)とは?

1951年生まれ、アメリカ・ヒューストン出身の現代美術家。
一貫して「アートが社会的な意識と責任をいかに喚起しうるか」を追求し、地域住民との協働プロジェクトや科学者との共同作業、さらには誰もがアクセスできるデジタルゲームを用いた作品など、ユニークかつ幅広いアプローチを展開してきました。
美術の分野で人類の平和に貢献した作家に3年に一度授与される国際的な賞「ヒロシマ賞」の第12回受賞者に選ばれ、今回の記念すべき日本初個展が実現しました。
展覧会の3大見どころ
1. ヒロシマのための新作は「はだしのゲン」作者・中沢啓治氏へのオマージュ
展覧会場のフィナーレを飾る最後の部屋には、本展にあわせて制作された最新作が展示されます。
漫画『はだしのゲン』の作者である中沢啓治氏の少年時代をイメージした彫像が、広島に投下された原子爆弾「リトルボーイ」を想起させる大太鼓の上に直立。両手を差し伸べながら「ともに立とう」と静かに呼びかける、平和への強いメッセージが込められた象徴的な作品です。
2. 世界の危機や暴力の構造を問いかける、大規模インスタレーション
2001年9月11日の同時多発テロ以降のアメリカや世界を背景に、戦争や植民地主義、そして現代も続く暴力の連鎖を主題とした大規模なインスタレーション群が登場。爆弾をあえて「民主主義の花」として提示する《私たちの民主主義の奇妙な花》など、見る者に世界の矛盾を再考させる、緊迫感とメッセージ性に満ちた空間が広がります。
3. 50年以上にわたる活動の軌跡をたどる
1970年代半ばの初期作から近作までを、制作年順にたどることができます。
特定のスタイルに安住することを拒む彼のクリエイション。汚染された土壌を植物の力で浄化する科学的プロジェクト「Revival Field」や、地域協働で進められた「Fundred Dollar Bill Project」など、これまでの代表的な活動の全貌に迫ります。
展示構成
【第1部】奇妙な花の下で
暴力の歴史的連鎖と構造を可視化するセクション。破壊の象徴である爆弾や武器、植民地支配といった歴史の傷跡を、チンならではの日常的な素材を用いた造形へと変換して提示します。ウクライナやガザ、イランなど、今日なお暴力が渦巻く現代世界を理解するための切実な視点を与えてくれます。



【第2部】逃れられない歴史
チンの50年以上の創作の歩みを紹介。中国思想、西欧のメメント・モリ、シュルレアリスム、コンセプチュアル・アートなどの影響を受けながら、多彩なメディアを横断してきた彼の幅広さを体感できます。1988年に制作され、パレスチナとイスラエルの関係を扱った作品《逃れられない歴史》など、時を経てもなお本質が変わらない歴史の重い事実を伝えます。



開催概要
- 展覧会名: 第12回ヒロシマ賞受賞記念 メル・チン展
- 会期: 2026年7月25日(土)~ 10月12日(月・祝)
- 開館時間: 10:00 ~ 17:00(入場は閉館の30分前まで)
- 会場: 広島市現代美術館 B展示室(広島市南区比治山公園1-1)
- 休館日: 月曜日(ただし9/21、10/12は開館)、9/24(木)
- 観覧料: 一般 1,600円、大学生 1,200円、高校生・65歳以上 800円、中学生以下無料 ※前売券は7月24日(金)まで美術館受付やオンラインショップ「339」にて販売。
開幕日の7月25日(土)には作家本人によるレクチャーも開催!
展覧会初日には、作家メル・チン氏が直接登壇する記念プログラムが開催されます。事前申込不要・参加無料で彼の生の声に触れられる貴重な機会です。
- オープン記念レクチャー:メル・チン
- 日時: 7月25日(土) 14:00~16:00
- 登壇者: メル・チン
- 会場: 広島市現代美術館 地下1階ミュージアムスタジオ
- 定員: 100名(当日10:00より1F受付にて整理券配布、通訳付)
その他、学芸員によるギャラリートーク(8/22, 9/19)や、毎週末に開催されるアートナビ・ツアーなど、作品をより深く知るためのプログラムも多数用意されています。
Indiebase編集部より
メル・チンの生み出すアートは、時にユーモラスでありながらも、その裏には社会の構造を問い直し、私たち自身の意識を揺さぶる強烈なエネルギーが秘められています。
この夏、広島から世界へと発信される「抵抗と共感」のメッセージを、比治山公園の美しい自然に囲まれた美術館で、ぜひ全身で受け止めてみてください。
(文:Indiebase編集部)
