こんにちは、CHAPATAです。 第3回で紹介するのは、視覚的な暴力と、じわじわと精神を削る静かな恐怖が同居した怪作、『The Horror Of Salazar House』。
かつて任天堂が放った伝説のハード「バーチャルボーイ」を覚えているでしょうか。あの「赤と黒」だけの世界で、最悪のバッドトリップを体験したら……そんな妄想を形にしたようなゲームです。
■ 赤と黒が織りなす「鮮血のジャッロ映画」体験
まず目を引くのは、その異常な色彩設計です。 基本は「赤と黒」の2色のみ(設定で白黒等に変更可能ですが、赤を推奨します)。 一見するとチープなドット絵に見えますが、これが動くと印象は一変します。キャラクターの動きに「ロトスコープ(実写をトレースする技法)」が使われていて、不自然なほどヌルヌルと、生々しく動くんです。 この「ドットなのに、動きだけが人間臭い」という違和感が、とてつもなく不気味。まるで呪われた古いフィルムを覗き込んでいるような錯覚に陥ります。

■ 失踪した作家と、血塗られたサラザール邸の謎
物語は、失踪した有名な作家とその家族を探すため、一人の記者が邸宅を訪れるところから始まります。 形式は古典的なポイント&クリックのアドベンチャー。 しかし、邸宅の探索を進めるうちに、あなたは気付くはずです。「ここは、生きている人間がいていい場所ではない」と。 随所に散りばめられた70〜80年代のイタリアン・ホラー(ダリオ・アルジェント的なジャッロ映画)へのオマージュが、単なるドット絵のホラーを、格調高い惨劇へと昇華させています。

■ 「逃げられない」という絶望感
邸宅には、ある「存在」が徘徊しています。 姿が見えた瞬間に心臓が跳ね、必死に隠れ場所を探すあの焦燥感。 本作はパズル要素も秀逸ですが、常に「背後に誰かがいる」という気配が、解法の思考を妨げてきます。 エンディングは複数用意されていますが、真相に辿り着くためには、この赤黒い迷宮の奥底に隠された、あまりにも残酷な家族の歴史を直視しなければなりません。

■ CHAPATAコメント
「不気味の谷」をドットで再現した天才的演出
『The Horror Of Salazar House』の凄みは、制約(2色・低解像度)があるからこそ、プレイヤーの想像力が恐怖を補完してしまう点にあります。 特にあの、滑らかに回転しながら迫りくる「何か」のグラフィック。網膜に焼き付いて、ゲームを消した後も暗闇の中にあの赤いシルエットを探してしまう。 レトロゲームへのノスタルジーを、これほどまでに邪悪なエネルギーに変換した作品を他に知りません。 今夜、あなたの部屋を「赤」で染めてみませんか?

そのドアを開けたら、もう戻れない。赤と黒の惨劇が待つサラザール邸へ。
▶ 『The Horror Of Salazar House』Steamページ
※本記事内の画像は、本作のSteamストアページにて公開されているスクリーンショット画像を使用しています。
CHAPATAのインディーゲーム探訪 | 連載アーカイブ
「次に出会うべき、劇薬のような一本を。」——過去の連載記事はこちらから。
(文:CHAPATA)
