20世紀アメリカ具象絵画を代表する画家、アンドリュー・ワイエス(Andrew Wyeth, 1917-2009)。彼が描いた窓や扉は、単なる景色ではなく、観る者の内面を覗き込むような「隔たり」の哲学を秘めています。東京都美術館は、開館100周年を記念し、2026年4月28日(火)よりその大回顧展を開催します。
潮流から離れて描かれた「精神世界の具象」
ワイエスは、第二次世界大戦後のアメリカ美術界を席巻した抽象表現主義、ネオ・ダダ、ポップアートといった主要な動向に対し、孤高の道を選びました。彼は生涯を通じて、自身の身近な人々と風景をひたすらに描き続けた画家です。
その作品群の魅力は、眼前にある情景の単なる再現描写を超え、作家自身の精神世界が深く焼き付けられていることにあります。それが、観る者を静謐かつ内省的な世界へと引き込みます。
私的な「境界」と西洋絵画史のテーマ
本展覧会のテーマは、ワイエス作品に数多く描かれる「窓」や「扉」といった境界を示すモティーフに着目することです。
西洋絵画史において、境界は古くから象徴的なテーマとして取り上げられてきました。しかし、ワイエスにとっての境界線は、より私的な意味合いを帯びています。それは、画家自身の内面世界と外側の世界、あるいは日常と非日常を隔てる私的な繋がり、あるいは境目として成立していたのです。
この展覧会は、普遍的なテーマである「隔たり」の表現に着目することで、ワイエスが自身の閉じた世界の中でいかに普遍的な感情を抽出したのか、その哲学的な深さを問いかける機会を提供する。
展覧会基本情報
| 項目 | 詳細 |
| 展覧会名 | 東京都美術館開館100周年記念 アンドリュー・ワイエス展 |
| 会場 | 東京都美術館 |
| 会期 | 2026年4月28日(火)~7月5日(日) |
| 主催 | 東京都美術館、東京新聞、フジテレビジョン 他 |
| 公式サイト | https://wyeth2026.jp/ |