「ふっと ふりかえれば ふるさとのやすらぎ―。」というキャッチコピーと共に、俳優・萩原健一といしだあゆみの共演で話題を呼んだ伝説のドラマ『祭ばやしが聞こえる』が、遂に初ソフト化され、現在発売中です。1977年(昭和52年)に日本テレビ系で放送された本作は、「傷だらけの天使」「前略おふくろ様」と並ぶ、萩原健一の代表的な主演作品の一つとされています。

競輪選手の挫折と、人情に触れる魂の再生
物語の主人公は、「まくりの直次郎」と呼ばれ将来を嘱望された競輪選手、沖直次郎(萩原健一)。レース中の落車事故で膝部複雑骨折という致命的な怪我を負い、人生の岐路に立たされます。
直次郎は、先輩で師匠でもある高橋鷹男(山崎努)の実家、山梨県下吉田の温泉旅館「日影旅館」で療養とトレーニングを始めます。そこで出会うのが、美人で働き者、どこか謎めいた妹・キク(いしだあゆみ)や、露天商の親方たちといった人間味あふれる人々です。男の生きざまと、その中で心をとらえられていく人々の人情が描かれる極上のヒューマンストーリーです。

35ミリフィルムが捉えた昭和の熱量と技術
本作の最大の特徴は、当時のテレビドラマとしては異例の、全編35ミリフィルムという映画並みのスケールで撮影されたことです。第20話は「第18回 日本テレフィルム技術賞」を受賞しており、映像制作現場の技術が極めて高く評価された、技術的挑戦の結晶であったことがわかります。
また、この作品のカルチャー的価値を高めているのが、和製ソウルの名曲として有名な柳ジョージ&レイニーウッドが歌いヒットした主題歌です。ロケ地となった富士吉田の町並みや、当時の富士急ハイランドなど、昭和を感じさせるノスタルジーな景観も見どころです。
なお、萩原健一といしだあゆみは、本作での共演がきっかけで結婚しています(のちに離婚)。山崎努、中原ひとみ、室田日出男、絵沢萠子といった豪華レギュラー陣に加え、小林稔侍、殿山泰司などの個性豊かなゲスト出演者もストーリーを盛り上げています。
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