最近、一冊の小説を最後まで読み切る体力がなくなった——。 そんな寂しさを感じている方にこそ、手に取ってほしいゲームがあります。
かつてページをめくる手が止まらなかったあの高揚感は、今、インディーゲームという形を変えて生き続けています。正直、仕事のメールやSNSの断片的な言葉に疲れた夜、私はよくこれらの作品に逃げ込みます。スマホを置いて、静かな部屋で「行間」を読み解く。そんな、良質な読書体験に匹敵する5作品を厳選しました。
1. Disco Elysium – The Final Cut
現代文学の極北。脳内の「声」と対話する、哲学的な推理劇
開発: ZA/UM

本作のテキスト量は、一冊の長編小説を優に超えます。失踪した記憶と、脳内に響き渡る24の感情たち。これほどまでに「人間という存在の滑稽さと美しさ」を鋭い言葉で描いた作品を、私は他に知りません。純文学を好む人なら、主人公の独白の一行一行に、鋭利な刃物で心を切りつけられるような、心地よい痛みを感じるはずです。
▶ [Steamストアページ]
2. Citizen Sleeper (シチズン・スリーパー)
星の屑の中で紡がれる、剥き出しの「生」と「連帯」の物語
開発: Jump Over The Age

宇宙の辺境にある廃墟のようなステーション。そこで、企業の所有物として「眠る者(スリーパー)」となったあなたの生存記録です。TRPGのようなダイスロールが運命を決めますが、本作の真髄はそこではありません。サイバーパンクという枠組みを借りて描かれるのは、労働、格差、そしてささやかな友情。その筆致は驚くほど繊細で、詩的です。見知らぬ誰かと食卓を囲む描写に、あなたは本物の文学を感じるでしょう。
▶ [Steamストアページ]
3. Chants of Sennaar
「言語」という最大の謎を解き明かし、分断を繋ぐ詩学
開発: Rundisc

バベルの塔をモチーフにした、未知の言語を解読する旅。文字の意味を推測し、ノートに書き留め、世界の理を理解していくプロセスは、翻訳の仕事や比較文学の学問に近い知的な快感があります。言葉が通じないもどかしさが、一筋の「意味」として繋がった瞬間のカタルシスは、どのミステリー小説の解決編よりもドラマチックです。
▶ [Steamストアページ]
4. A Space for the Unbound (心に咲く花)
ノスタルジーと魔法。日常の裏側に潜む「痛み」を綴る
開発: Mojiken

90年代後半のインドネシアを舞台にした、瑞々しくも残酷な青春群像劇。吉本ばななや村上春樹の初期作品を彷彿とさせる、静かなマジックリアリズムの空気が漂います。人々の心の中へ潜り、隠された想いを「咲かせる」物語は、かつて自分の居場所を探していた「あの頃の私」を優しく、そして激しく揺さぶり、忘れがたい余韻を残します。
▶ [Steamストアページ]
5. NORCO
泥濘の南部ゴシック。崩壊する世界で綴られる「祈り」
開発: Geography of Robots

アメリカ・ルイジアナ州の湿地帯を舞台にした、SFと超現実主義が混ざり合うアドベンチャー。宗教、産業、そして家族の崩壊。退廃的なドット絵とともに流れる散文詩のようなテキストは、現代アメリカ文学の深い闇と、そこに差し込む微かな光を同時に描き出します。正直、万人受けする内容ではありませんが、刺さる人には「一生モノ」の傷跡を残す、真に文芸的な一品です。
(注:本作は公式の日本語サポートはありません。しかし、辞書を片手にその深淵な英文を辿る価値が、この作品には間違いなくあります。刺さる人には「一生モノ」の傷跡を残す、真に文芸的な一品です。)
▶ [Steamストアページ]
■ Indiebase 編集部より
ページをめくる指が止まらない。そんな体験を、コントローラーを握る手で再び味わってみてください。 今回選んだ5作品は、遊び終わった後に「自分の中の何かが少しだけ変わってしまった」と感じさせる、確かな力を持ったものばかり。
忙しい日常の手を止めて、言葉の海に深く沈んでいく。そんな贅沢な時間を、今夜の自分にプレゼントしてみませんか?
(文:Indiebase編集部)
次の「一生モノ」に出会うために
Indiebase Select | 編集部厳選:インディーゲーム傑作選
「とにかく面白いインディーゲームが知りたい」——そんな時は、こちらの傑作選からあなたの次の一本を見つけてください。
▶ Indiebase Select を見る
本記事の画像引用について
本記事で使用しているゲーム画面およびアートワークの著作権は、各開発元・配信元に帰属します。
出典: Steam ストアページ
